翼の拳
〜Fists of Wings〜


第67話

作者 島村鰐

「しっかしあれだなー、なんか外国に来た感じしないよなー」

ここはシティ市街部にある「菅生デパート」内の
ホビーショップである。

「なんかやたらと日本のものが多いぜ…誰の趣味なんだ?
 この街自体大会のために作ったようなものだって聞いたけど…」

義仲のぼやきも尤もである。
このホビーショップは、どういうわけだか日本のアニメ・特撮ヒーローモノの
グッズばかりで染まっていた。
特撮ファンの気があるゼウスが仮面ライダーの巨大ソフビ人形の展示に
引かれて入ってみることになったのだが…

「ライダーマン、レインボーマン、キカイダー…なんだこりゃ、
 突撃ヒューマン!?知らねー…」

義仲にとってはさすがにわけのわからないものばかりである
(ゼウスにとっても仮面ライダー系統以外は全く未知であるらしかったが)。

「全くいい大人が何でこんなもの買いあさるかなー。
 って子供が買うような値段じゃないのも有るし…ん?」

見れば、ゼウスがある商品の前で固まっていた。

「な、なんだ…おまえ、そう言うの欲しいの?」

「え!?あ、いやぁ…でも無駄遣いは良くないですよね〜」

「いらない」とは言わないあたり、正直というか、己を欺く限界を超えたのか。

「…そんな高いものでもないじゃん。そのくらいなら俺が買ってやろうか?」

「え!?」

ゼウスとしては、この申し出は心底驚いた。

「いいって、どうせ土産物色々買って帰るつもりだったし」

「でも…」

「金のことなら気にすんなよ、こういう買い物のためにウチから
 一寸余計にくすねてきたからさ」

「……み、身内のこととは言え、それって犯罪じゃぁ…」

「良いって、どうせ胡散臭い金だし。賞金出たらそれで返すんだからさ」

そう言ってにやりと笑う顔は、末はヤクザか奸雄かと言う悪童のそれだ。
義仲は問題のものを引っつかんで、レジへと向かうと、
さっさと会計を済ませてしまった。

「ほら、これ。一寸気が早いけど、凱旋土産な」

「よ、義仲さん…」

義仲の手から物を受け取るや、ゼウスの両眼からぼろぼろと涙が溢れ出す。

「有難うございます!感激ですぅ!一生大事にします!
 お墓の中まで持っていきますぅ!!」

「……お、大袈裟だな…まぁ良いか、ここはもういいだろ、次行こうぜ、次」

「はいっ!」

予想外に大仰な喜びようのゼウスに若干おののきつつ、義仲らは店を出た。

ホビーショップのとなりはこれまたなにやらアヤシゲな
パーティーグッズショップである。

「…ううむ…どうもイロモノなエリアに迷い込んじまったようだぜ…お!?」

アヤシゲなグッズの山を物色していた義仲が、突然その足を止めた。

「どうしたんですか?」

「…ふふふ、ひらめいたぜ。見てろよ、強烈なインパクトのデビューを
 決めてやる!」


 

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