翼の拳
〜Fists of Wings〜
第75話
作者 ナニコロ
| 涼子が一歩踏み出した。 「随分と自信あるみたいね……」 ピシリ……。 流石の義仲も、この空域に走る空間湾曲を感じていた。 挑発的なゼウス、表情から一切の表情を消した涼子。 見えない電撃がすでに走りまくる空気。 良く分からないが……とにかく……ヤバイ。 滅茶苦茶ヤバイ。 非常にヤバイ。 これだけは本能で分かった。 思わずゼウスと涼子の間に入る義仲。 「待て待て待て! 二人とも落ち着け! な?」 「アタシはね……上辺しか見ていない、格闘技も知らないような一般人が、腹立たしいだけ!」 「怒るってことは、それだけ自信が無いってことじゃないの? 残念だけどキミが絶大な信頼をおく北条あずみは負ける!」 「うわぁなんかこいつすっごいむかつくよこのあま。 ていうか、怒りMAaaaaX!」 「お前らやめろぉぉぉぉぉ!」 そこには、頭を抱える義仲の姿があったという。 「ていうか、義仲!」 涼子の矛先が、義仲にも向かった。 「この子をセコンドにするのも、彼女にするのもやめたほうがいい!」 「む、なんで僕たちの関係をあなたに指図されないといけないのよ! 大体、さっきからずっと思っていたけど、あなた、義仲さんのなんなの!?」 「アタシは、義仲の姉よ!」 世界は止まる。 そして、時は動き出す。 「…………マジ?」 「マジよ」 「マジマジ」 「え、だって……苗字が……」 「俺と涼子の父親は同じなんだよ。 つまり、俺たち母親違いの姉弟なんだ」 次の瞬間だった。 ゼウスの表情が一変したのは。 「まあ、お義姉様!」 先ほどとは信じられないほど、奥ゆかしさと可愛らしさをもった笑顔を涼子に向けるゼウス。 「さきほどはごめんなさい。僕も、少し言いすぎました」 「うわぁこいつかわりみはぇえ」 目に見える超巨大な餌の要らないネコを背負うゼウスがそこにいた。 と、近くの繁華街のオープンカフェが、にわかに騒がしくなりだした。 |
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