大統領ゴライアス・ゴードン
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| 空港送迎口。 ブレザーの制服姿に、ブラウンの少し入った髪の少女が 1人、そろそろ到着する恋人の帰りを待っていた。 「むっふっふ〜ん☆ ひーちゃんたら「旅行から帰ったらすぐデートしたい」なぁんて 言ってくれちゃって〜、ああん、待ち遠しいなぁ‥‥」 すっかり夢気分。手には彼氏から送られてきた、これから一緒に 行くのであろう映画のチケットが握りしめられていた。 「女・平坂雪絵、今日のデートこそ何事もなく終わらせるわよッ! いままでのデート中、ロクな事が起こらなかったし‥‥ あ、ていうかある意味何事もないというのも困るんだけど‥‥」 「大統領が到着したぞ!!!」 猛牛の群れの突進のごとく走り抜ける報道記者団。 後にはカエルの轢死体よろしくはいつくばる雪絵の姿があった。 「ぐっ‥‥さっそく『来た』わね‥‥私‥‥負けないッ‥‥ うう、そうだ、チケット!チケットが‥‥無い!?」 大慌てで辺りを見渡す。見ると前方上空をチケットがヒラヒラ舞っていた。 「ああ!!ま、待って〜!!」 チケットを目で追い、走る雪絵。当然目の前は見てない。 飛行機内へと運ばれる荷物郡の中へと突っ込む。 たまたま口の開いていたトランクの中へスッポリと埋まりこむ雪絵。 「ぐぇ!!な、なんでこんなとこに‥‥!?」 必死にもがき、出ようとする。 と、その上に新たに放られたトランクがぶつかる。けっこう重いやつ。 「グゴゲ‥‥ッ‥‥!」 『ぱたむ☆』 「!‥‥!‥‥」 雪絵号機、沈黙。 「ん、なんかいるのか?」 調べようとした係員を、他の係員が叱る。 「おい!大統領専用機の荷物なんだぞ!大切に扱え! さっさと運べ!もう検査もすんで運ぶだけなんだからな」 荷物郡がまとめてコンテナへと運ばれる。 『ばたーん』 コンテナの扉がロックされた。 「‥‥で、マッジオ、例の物は持ってきたか?」 アルバンスが真剣な表情で聴く。 「ああ‥‥お前の『武器』だ」 手に持っていた袋を手渡す。中身を確認するアルバンス。 「金属探知機対策はこれで大丈夫だろう」 「確かに。ありがとよ‥‥後は俺1人でやる」 「‥‥‥‥」 マッジオとバンハイが肩をすくめる。 「アル、何のためにバンハイまで呼んだと思ってるんだ?」 バンハイの笑みがさらに濃くなる。 アルバンスが眉をひそめる。 「‥‥てめぇらバカか?」 その言葉にマッジオが一転、厳しい表情になって言った。 「アル、怒りを胸に秘めているのはお前だけじゃあない‥‥」 マッジオがシャツの前を開く。 銃を収めたホルスターがチラリと見えた。 「国を愛する気持ちは、我々も同じだ」 「コソコソするのは、悪い子よ〜ン?」 「マッジオ‥‥バンハイ‥‥」 「外でロネとチュンも準備している。偽造証明書は持って きたな?俺たちは報道関係者になりすまして飛行機に 乗り込むんだ。そして‥‥」 「ああ、俺たちの祖国ラバンダを滅茶苦茶にした、 あの悪魔を殺す‥‥!」 吐き捨てるように言った。 「マッジオ‥‥お前は"運命"というものを信じるか?」 ポツリと、アルバンスがつぶやいた。 「運命?」 「‥‥今日はな‥‥娘の誕生日だったんだ‥‥」 「そうか‥‥そろそろ1年になるな‥‥」 「生きてれば、11歳になっていた‥‥」 「この計画がたまたまこの日になるとは‥‥ これも君の娘さんの巡り合わせだろう。‥‥いくぞ」 搭乗口へと移動を始める3人。 冷静に一歩一歩を踏みしめるアルバンス。 しかしその心はドス黒い憎悪に染まっていた。 「ゴードンの、首を取る‥‥そのためならなんだってしてやる。 地獄に落ちる事だってしてやる‥‥」 その口元が、ふと緩んだ。 「あの子への、"バースデープレゼント"だ‥‥」 |
| 第3話に続く |
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