〜炎の城〜
13 「遭遇」
| 「何をしておるのだ‥‥‥!?」 秘書室。キルマーはミューの携帯に電話をかけていた。 タワー内でトラブルが起こればまずミューに声がかかる。 今回もミューが現場へむかった可能性は大きい。 しかし、いっこうに応答はなかった。 「"戦闘中"か‥‥‥?」 諦めて切ろうとした瞬間、応答があった。 *『もしもしぃ‥‥‥?』 ミューではない。しかし聞き覚えのある声。 「その声は‥‥‥ヒラサカ様ですか!?」 『!‥‥‥キ、キルマーさんですか!?大変なんですっ!あ、あの、 怖いターバンの人にガードマンやミューさんがみんなやられちゃって‥‥‥!』 「ミューが!?‥‥‥ヒラサカ様、ミューに替わっていただけますかな?」 『え?それが‥‥‥ミューさん‥‥その‥‥‥』 「!!‥‥‥まさか、死‥‥‥」 『‥‥‥シャンデリアの下敷きになっちゃって‥‥‥とても話ができる状態じゃあ‥‥‥』 「!」 キルマーは自分の軽率さが招いた結果に愕然とした。 (なんと容赦のない‥‥‥!完全に奴らを甘く見ていた‥‥‥!) 『あ!今ミューさん動いたぁ!!』 「!?」 「ミューさん!?」 ミューの生存に胸をなでおろす雪絵とグラス兄弟。 「なんとしぶとい」「いやもとい、お丈夫で」 ミューは咳き込んでいた。 「げほ、げほっ‥‥‥くそ‥‥‥」 ミューは起き上がろうとして、自分がシャンデリアの下敷きになっている事に気づいた。 「!?‥‥‥くそ、あの野郎ォ‥‥‥ひでぇ事しやがる‥‥‥!」 「ミューさん‥‥‥よかった‥‥‥」 雪絵は2つの意味でよかったと思った。 1つはミューが生きてた事。 もう1つはシャンデリアを落としたのが自分だと気づいてないみたいだった事。 グラス兄弟がシャンデリアを持ち上げ、ミューを救出する。 なんとか這い出るミュー。 「この私が‥‥‥敵を討ちもらしたッ‥‥‥!」 「あ、あのミューさん、キルマーさんから携帯に‥‥‥」 「ん?ああ‥‥‥」 ミューは携帯を受け取った。 『私だ。キルマーだ』 「‥‥‥すまねぇ、しくじった‥‥‥キルマー、私は役立たずか?」 『ん?』 「ゴードン様は‥‥‥私を見捨てたり‥‥‥しねえかなぁ‥‥‥ なぁ‥‥‥‥‥‥答えてくれよおおお!」 雪絵の目にも、ミューが哀れなまでに震えているのかがわかった。 『落ち着けミュー』 「!‥‥‥」 『閣下はお前に『完璧な仕事』など求めてはいない。ミスは誰でもする事だ。 フォローすれば良いまでの事』 「‥‥はい」 『ミュー、とりあえず私は情報が欲しい。お前が見た事を話せ』 「あ、ああ‥‥‥聞いてくれ! あの黒ターバン野郎‥‥‥とんでもねえ強さだ!」 『‥‥‥どんな戦い方だった?』 「火だ。火を使うんだ‥‥‥よーく見てたが、まるでトリックがわからねぇ! ボリショイマジックとかそんなのとはわけが違うんだ!炎が生き物みてぇに 動き回るんだ!ありゃ一体なんなんだ!?」 『‥‥‥ミューよ、一つ言っておく。お前の見た炎はトリックでもまやかしでもない。 炎を自在に操る、そういう『能力』なのだ‥‥‥』 「の、能力‥‥‥?」 『よく覚えておけミューよ‥‥‥』 「?」 『‥‥‥奴らが、『暦』(カレンダー)だ』 「階段は‥‥‥どこだ‥‥‥?」 ディーはセントラルタワーの中をさまよっていた。 今現在40F。非常階段はこの階までだった。 最上階77Fまでまだまだ。別に上へ行く手段を探さねばならない。 エレベーターが目の前にあったが、電源を止められたら厄介なので使いたくない。 40Fは会議室などが並ぶスペース。しかし今は政務は行われていないらしく、ガランとしている。 ディーの足音だけがフロアにこだましていた。 「‥‥‥?」 ふと、通り過ぎた部屋から、人の気配がした。 ディーはドアノブに手をかけ、開いてみた。 中はサロンのようだった。 広いスペースに、いくつかの丸テーブルとソファが置かれている。 開かれた窓から、そよ風が入ってきていた。真白いカーテンが静かになびく。 陽の光がほどよく差し込む、心地よい空間。 「‥‥‥‥‥‥。」 しかしディーの視線は最初から、ソファに深々と腰掛けていたその男に釘付けだった。 黒く、長いスーツに包まれた巨躯。 ブロンドを後ろに馴らした髪。 目が飽くほど写真を見て覚えた、その顔。 ガイア共和国大統領、ゴライアス・ゴードンがそこにいた。 |
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