目立たないのが目立つ男
〜縁の下の力持ち〜


第5話


「お邪魔しまーす!」

ノックもチャイムも鳴らさず普通に入ってきた女性、ホープだった…。
彼女は当たり前のように2階の室伏の部屋に入ってきた。
室伏はホープが来たのも、気にせず今週号の某少年雑誌を読んでいる。

「ヤッホー!来たよ。室伏クン!あ、龍一も陽虎もいたの?あれ?木原クンも。珍しいね!」

大きな声が部屋に響いた。

「珍しいって…人を珍獣みたいに言うなよ……。」

木原の言葉を無視して、龍一の方に歩いていく。

「あれ?龍一、背の伸びんじゃない?格好良くなったよね〜。」
「えっ?そうですか…?」
「お母さん!私も私もぉ〜!可愛くにゃったでしょぉ〜?」
「うんうん、可愛いわよ。流石、私の血を引いてるだけはあるわね〜。」

「このバカ親子めが!!」っと…
木原は叫びたかったが、そんな事をすればおそらく鉄拳が飛んでくる。

「わ〜い!!若いお母さんに誉められたぁ〜!お父さん、誉められたよぉ〜!」
「あ〜、ハイハイ、わかったから、騒ぐなよ。」

室伏は雑誌を読みながらウザそうに答える。
しかし、陽虎はしつこく話しかける。

「お父さ〜ん。聞いてるぅ?」
「聞いてるよ。(信じられねぇ、こいつ本当に高校生か?未来の俺やホープ…どんな育て方したんだ?)」

未来に不安を感じた瞬間だった。
ホープが言いたいことを言い終わった隙をついて、木原はとりあえず話しかけた。

「あのさ、夕食の時に話すけど、ちょっと話があるんだ。」
「ん?何?私に話なんて珍しいね〜。雨が降るかも…」

すごくタイミング良く、雨が降ってきた。
室伏は雑誌を置いて起ち上がった。

「いけねぇ…洗濯物入れないとな。」
「俺も手伝います!」

そう言って、室伏と龍一は洗濯物を入れに庭に駆けていった。
彼は妙なところで、几帳面だったりする。

「んで、話って?」

ホープが木原に向かって話し掛けた。

「いや、夕食の時にゆっくり話そうと思う。」
「ふぅーん、その目…誰かに恋してるね?」
「なっ、何故、わかったんだ?」

唐突に本心を言われ、「ビクッ!」とした木原。

「う〜ん、室伏クンと同じ感じがしたから…」
「あ、いや、あれとは別だと思うけどなぁ…」
「ううん、同じだよぉ〜。ちょっとだけ、のろけちゃうけどさっきの木原クンの思い詰めた目は室伏クンが私を見る目をしてたと思う。」

彼女がのろけるのは、いつもの事だが今日はいつもと違う、変な言い方だが、いつもより真面目にのろけている。

「へっ?あいつがおまえを見る目…?(あんな怠そうな目か?)」

木原は少し考え込んだ。しかし、1分も経たないうちに、室伏達が階段を上る音が聞こえた。

「ぶぇっくしょん!!あ〜…」

階段から、大きなくしゃみが聞こえる。こんな下品なくしゃみは龍一には出来ない。室伏に決まっていた。

「お父さん、風邪ですか?」
「知らねぇ〜、多分、女の子が俺の噂してるんだろ?」
「お父さんって、そんなにモテるんですか?」
「…ったりめーだ!本当は、あんな悪魔(ホープ)じゃなくても付き合えるんだよ…」
「あははは…お父さん言い過ぎですよ〜。」

堂々と聞こえる声にブチギレるホープ・グリーン。
室伏の部屋のドアが開いた…

「にゃ!!?まずいにゃ!」

陽虎は何故か耳栓を用意する。

「やっぱ、誉めた言葉撤回。任務遂行…」

木原もホープのこのセリフを聞いてから恐怖に気がつく。




室伏と龍一が殺されかけたのは、読者のあなたにも予想がつくであろう。
あまりにも残酷なのでここはカットする。




夕食編に続く


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