目立たないのが目立つ男
〜縁の下の力持ち〜


第6話


あの後、殴られた室伏&龍一は何とか一命を取り留めた。
親子共々、たんこぶ3段程度で済んだのは奇跡である。

「でさ、どうすれば良いかな?」

木原が出前のラーメンをすすりながら室伏に聞く。
どうやら、ホープの料理は食えたものではなかったらしい。

「う〜ん…そうだなぁ…。おまえは内気だからなぁ〜…」

室伏もラーメンをすすりながら答えた。

「第一に聞きたかったんだけど、好きな人って、誰なの?」
「そういえば、それを聞いてませんでしたね。」

ホープと龍一が木原の方を見て聞いた。

「え、えっと…空手部の…す、すすすす…杉本さ…ん………」

その名前を口に出したとたん、木原は顔を赤くした。

「ああ、あの娘か〜。可愛いとは思うけどなぁ〜。」
「にゃ?そうなの?」
「ちょっと待ってな…。えっと…す……す…杉本…」

室伏はラーメンのスープを飲み干した後、懐から端末手帳を取り出した。

「なんですか?それ…」
「校内の可愛い女子のメモだ。しかも、豪華写真付き!!」

その手帳にはAクラスと書かれている。どうやら、ランク付けしてあるようだ。

「ふぅ〜ん、そんなの作ってるの〜?私は何ランクかしらねぇ〜?」

ホープが室伏の懐に強引に手を入れる。
彼女の顔は笑ってはいるが、絶対に怒っている。

「うわっ!!やめろっつーの!!」
「にゃー!!私もみたいにゃぁ〜!!」
「やめろって!!」

陽虎も乱入するが、室伏がSTOPを掛けた。

「待て待て!!STOP!!STOP!!まずは木原に情報を見せてからだ!!」

そう言うと、室伏は木原に手帳を見せた。

「…す、すげぇ!!ス、スリーサイズまで書いてある!?」
「凄いだろ〜。結構、役に立つだろ?」
「しゃ、写真の杉本さんもいいな……」
「ああ、俺が気に入ったのを貼ってあるんだぜ〜。」

室伏が自慢気に腕を組んで言った。

「それで、私は何処に書いてあるの?」
「あ〜、確か、このノートのここだ。」
「やったぁ!Aランクだぁ!!あれ?でも、私の欄だけ、写真ないよ?」
「毎日のように顔見てるヤツの写真を貼る気にならねぇよ。」

耳糞をほじりつつ室伏は言う。

「それって、顔をしっかり見てくれてるって事だよね?」
「はいはい、そうです、そうです。そーいうことにしてください。」

適当な事を言う室伏。
木原はそんな会話に興味なくメモ帳に見入った。

「キーにゃん、随分見入ってるね〜!」
「ああ、うん、まあね。…そうか、彼女、強い男が好きなのか…。」

木原はドキドキと心臓を高鳴らす。
龍一はそんな木原を見て、ついつい応援したくなった。

「へぇ〜、木原さん、本当に頑張りますね。」
「ああ、これが初恋だからな…。」
「にゃ?初恋にゃの!?」
「まあね。俺は中学時代は運動に燃えてたから…」
「ともかく、頑張ってください!俺、応援しますよ!」
「私も応援するにゃぁ〜!!」
「ありがとう、二人とも……」

木原は内心信じられなかった……
何故、あの二人にこんなイイコが生まれたのかが……
だが、そんなことはどうでも良かった。

室伏は木原から手帳を取り上げた。

「よし、杉本 梨菜だな?合コンにこの娘を呼んでおくぜ!!」
「ばっーーー!!!」

木原は思わず叫んだ。
今の叫びを日本語訳すると、
「目の前にホープが居るのに何ぶっちゃけてんだよ!!阿呆!!」
 そうです、室伏は阿呆です。(再び断言)

室伏は合コンをホープに内緒だと自分で言っていた。
やっぱ、楽しみになると内緒と言うことも忘れてしまうのだろう。

阿呆だから………(やや強引)

室伏の肩をポンポンと叩くホープ……

「ん?どした?」
「合コンって何よ…?」

赤い怒りのオーラを纏うホープ…
今の彼女は怒りの戦士でしかない。
それに気がつかない室伏は…やはり阿呆の度を越していた。
「全国阿呆選手権大会」を開くなら、青島に並んで上位5位には入る。

「あ?知らないのか?合コンってーのはなー、女子と男子が互いに集まって…」

――――プッツン―――――

「おーまーえはー、あーほーかー!!!」


絵にも描けない恐ろしさ…。その夜、食卓が赤く染まったのはまず間違いない。
まあ、読者には何があったか予想がつくでしょう。ってな訳で、略します。
(注:無論、木原も巻き添え)


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