波間にて


桟橋の上にイスが置いてあり、さらに飛行艇屋台が泊まっていた。

「・・・・・・っふ・・」
プロトは、半ば以上ヤケになっていた。
そこではひまわり人間たちが手を振っていた。
何でか知らんが車に載せた二倍はいる。

いや、もう何も言うまい。
なんだか知らないが脳内でどんどん覚悟が芽生えつつあった。

9月嬢が既に受付を済ませており、案外すんなりと入れた。
しゃべって歩くひまわりの一団をみても眉一つ動かさない、
許容範囲の広かった和服姿の店員さんに心から感激しつつ、
一同は店員さんについていった。
しずしずと艇内に案内されると、そこでは御丁寧に用意が準備万端整っていた。
早速、ひまわりたちがぞろぞろと座り、その間に9月嬢とプロトがぐぐっと入る。
山ほどのひまわり人間と体をすり合わせる微妙な感覚に耐えながらも、
プロトはきっぱりと言い切った。

「ビールと月見ソバ。おねがいしまさあ。」
「寿司の盛り合わせを。」
「ぎゅうどん!」
「からあげ!」
「すきやき!」
「ドリアンアイスも、おねがいしまさあ。」
「日本酒一樽!」

さあ、修羅場の幕開けである。


「ガルベットはいるか?」
「いえ、おりません、6月様。
 あれがまた何かやらかしましたか?」
心底楽しそうに問われた男が尋ねた。
「いや・・珍しく今日といい昨日といいヤツがまともに任務についていてな・・
 少々気になっただけだ。」

6月氏は、もう一度きょろきょろとそこらを見つつ言った。

「まさか油断させておいて、
 抜け出して宴会にでも興じているのではないかと不安になったが・・
 徒労のようだったな。」


徒労じゃない、
その通りである。




早速、大量の食事類が運び込まれる。

所狭しと並べられるつまみや軽食の群れ。
ほんとにくるとは思ってなかった日本酒一樽。
どっかと机のど真ん中に置かれたすき焼きと、それに入れるための野菜と正体不明の肉類。
それと、キレたプロトが適当に注文しまくった爆弾のようにアルコールが高い酒と、
すさまじくかぐわしい芳香を放つドリアンアイス。
ただ一つ、9月嬢の注文した高級感溢れる寿司の盛り合わせだけが、
無茶苦茶かつ乱雑なレパートリーの食料群の中で異彩を放っていた。


「それではみなさん、いただきましょう。」
9月嬢の音頭とともに戦争が端を開けた。


次々と消え行く酒と料理。

まるで戦時の軍人の様にプロトとひまわりたちは食事を貪り食う。
飲み散らかす、見てらんない。


けど、これもまだ序の口だった・・!


 


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