Fists of Wings・番外編
真夏のように〜真紀と夏香〜
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−3−『新部員』
| 「もう一つ重要なこと?」 オウム返しに聞く夏香に、少林寺は猫の頭を撫でながら答えを返した。 「そう……超常現象研究会に部員が一人増える」 「……まーさーか」 「冗談の類じゃない」 「……マジ?」 「マジで」 ほんとんど調子を変えることなく答える少林寺。 「ウチのクラスなんだが、つい二日前に転校生が来た」 「こんな夏休み真直かに転校生?」 「そう。転校生。……履歴が凄いんだ」 「どんなふうに」 少林寺がメガネの位置を人差し指で直す。釣られて夏香もメガネのズレを直した。 「俗に言う天才少女……3歳の時にはすでに大人に混じって国立大学の論文の問題点を指摘でき、12歳にして国家レベル研究所に最重要研究者として勤めている、本物の天才少女。 年齢は、今年で14歳。 それが学校生活を体験したいと……一ヶ月に一日か二日という期間限定で、ウチの高校に転校してきた」 「うわぁ……なんつーか、物好きな。ていうか、なんでウチの高校よ」 「そこまでは俺も知らない。なんでも、彼女の方から指定してきんだそうだ」 「へぇ……本当に物好きな……」 「その天才少女が、ウチの部に入りたいんだそうだ」 ガタン! 夏香は、思わず椅子から転げ落ちそうになった。 「なんでよ!?」 「知らない。だが、事実だ」 「……ぬぬぬ……んで、その天才少女とやらはどこにいるのよ」 「話ではそろそろこの部屋に来るはずだが……」 と、物理準備室の扉がガラリと空いた。 そこには二人の人間が立っていた。 一人は腰まである長い銀髪を三つ編みに結い、褐色の肌をし、シワ一つ無いタキシードを着こなした執事風の美形男性。 もう一人は……少女。 「あ、あ、あああああああ!」 夏香が少女を指差しながら、大きな声でうめく。 少女。妙に低い背丈に、漆黒の髪を執事同様三つ編み。 陰陽寺高校の制服、その上に白衣を着ている。 「お久しぶりですね。夏香さん」 優しさと強靭さと激情を秘めたルビーアイの瞳が夏香を射抜と、口元がニヤリと歪んだ。 その声質は大人とも子供とも形容し難い中性的な音色が帯びていた。 「真紀! 長月真紀! なんで、アンタが!」 夏香が少女に向かって叫んだ。 秘密結社『暦−カレンダー−』十二最高幹部の一人。 『9月』。 通称『長月』。 兵器開発機関担当。 世界に死の武器を売る者。 “殺神機人の” 長月真紀。 それが少女の名だ。 |
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