Fists of Wings・番外編
真夏のように〜真紀と夏香〜

■3■

―1―再会


「……知り合い?」

 少林寺宅の相変わらず無表情に等しい顔が夏香と真紀に向けられる。

「ま、知り合いといえば知り合いよね」

 夏香が渋面で答える。

 かつて同じ暦幹部として夏香と真紀は顔をあわせることが多かった。
 加えて、夏香が暦の存在に疑問を持ち始めたのが、ちょうど、真紀が前9月と入れ替えに新しい『9月』になったころのことだった。
 むしろ、真紀が暦に入ったことにより、今までの考えもしないことを考えるようになったとも言える。

「そうですね、しいて言えば……『親友』……『ライバル』そんなところでしょうか?」

「いやいやいや、どっちかてーと、悪友よ。悪友」

 真紀の言葉に、夏香が即座に突っ込む。

 真紀が来るまで夏香は無機質に時間を過ごしていた気がする。いや、言われるまま、暦に従属していた気がする。その時、その瞬間に何ら疑問も抱いていなかった。
 だが、この真紀が来てから、そういう日常が一変する。
 この真紀という少女、夏香の主観から見れば、明らかに『変な奴』である。

「ふむ、そうですね、他の者に例えるとすると……」

「いやいやいや、例えんでいい例えんでいい」

 思案顔の真紀に夏香が手をパタパタ振る。

 何故か夏香は任務で真紀と組むことが多かった。
 それならばまだ良いのだが、この真紀という少女、『分けのわからない物』を持ち出し、場を乱すことが非常に多かった。
 あるときは、施設内の人間を眠らせる催眠波兵器とやらを持ち出し、敵味方問わずに眠らせてしまった。
 またあるときは、夏香がターゲットに発見された緊迫の場面に、突然地面からモグラよろしく現れ『自爆』して、その場を意味も無くかき乱したりした。
 言ってしまえば、無用なピンチを巻き起こしたり、その要らぬピンチから被害出すことなく救ってみたりと、一貫性も主体性も無い行動が多い。
 しかし、不思議なのは、そんな明らかに変な物が多いにも関わらず、味方も敵もほとんど被害を出すことなく、それでいて成果を上げているのである。

「例えると……『幼馴染』」

「……そうかもねぇ……」

 夏香は思わず同意した。

 だが夏香は、この真紀といた時、確かにピンチも多かったが……正直『楽しい』と思うことが多かった。
 今まで体験したことがない事態を楽しませてくれるのである。
 同時に……『何でこんなことやってんだろ?』と思わせることも多い。
 それが結果的に、暦に疑問を抱くきっかけともなった。

 だからこそ、彼女は真紀のことを『コンビ』ではないかと思う。
 頭に『でこぼこ』がつく。


 


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