Fists of Wings・番外編
真夏のように〜真紀と夏香〜

■3■

―2―電子レンジ


「ところで」

 真紀はどこからか電子レンジを持ち出した。

「……なにこれ?」

「粒子加速器。別名、メガ粒子砲」

「……へー」

 夏香はゾワリと嫌な予感を抱きつつ、相槌を打った。
 真紀は電子レンジのタイマーを1分にセットする

「実は、ここに来る前に不法投棄されているこれを発見しまして。
 それで思わず粒子加速器に改造したんです」

「……へー。思わず改造したんだー」

「ええ、思わず改造したんですよ」

 と、電子レンジのタイマーがゼロを指した。

 瞬間。

 電子レンジ内部で、光が爆発的に発生し、ドアを自動オープンさせ、一閃のビームが放たれた。
 夏香に向かって!

「……っ!」

 まさに咄嗟だった。無意識、または本能とも言えるほどの素早さで、咄嗟に横へと飛びのけた。
 そのまま強力なエネルギー体は、夏香が居た場所を後方の窓ごと電子レンジの入り口の形に薙ぎ払い、跡形もなく消滅させていた。

 本気で肌があわ立つのを感じつつ、夏香は思わず真紀に駆け寄っていた。
 彼女の襟を掴む。

「危ないじゃないの!? 殺すつもり!?」

「殺すつもりはありませんが、当てるつもりでした」

「うわぁあっさりみとめたよこのおんな」

「ちなみに、3分に設定すると、理屈上は戦車も一瞬で消滅させられます」

 そう言うと、タイマーを3分に設定した。

 と。

「タイマーをまわすなぁぁ!」

 夏香の雄叫びと共に右足が高々と振り上げられる。
 そのまま、かかとの先端を武器に、電子レンジへと振り落とす。

 電子レンジは見事、真っ二つに切断されるのだった。

 振り返ってみれば、真紀との付き合いもこういう理不尽な兵器開発の実験台に使われたりして、悪い思い出もかなり多いように思える。
 以前、機械触手を作って来られた日には、本気でどうしよてくれようと考えたものである。

 真紀は、半分になった電子レンジを、無感動に眺めている。

「むぅ……何てことを」

「そりゃこっちのセリフよ!」

「……何故?」

「何故ってそりゃ、危ないからでしょうが!
 あんなのに当たったら命が幾つあってもたらないし!
 ていうか、絶対死ぬわい! 死ぬわい! 分かるでしょ!?」

 真紀は頭に『?』を浮かべて首を曲げた。

「不思議そうな顔すんなぁぁぁぁ!」


 


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