Fists of Wings・番外編
真夏のように〜真紀と夏香〜
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―3―自己紹介
| 「……どっちにしろ、二人は知り合いだということだ」 それまで黙ってことの成り行きを見ていた少林寺が答える。 膝の上のネコを隣のイスに移すと、立ち上がる。 「では改めて自己紹介し合おう。 俺の名前は少林寺宅。超常現象研究会の部長を務めている」 少林寺の言葉を聞きながら、彼の近くに寄った。 こうしてみると、真紀の背が『飛び抜けて低い』ことが分かる。 少林寺の視線が夏香に向かう。 不承不承といったふうに夏香も自己紹介を始める。 「麻生夏香よ。『よろしく』」 夏香の言葉は簡潔だった。 「他にも、猫柳伸二という部員がいる。だが彼は丁度留守にしている。 以上が、超研のメンバーだ」 少林寺の解説に、真紀もふ……と薄い笑みを浮かべる。 「では、私からも自己紹介をしましょう。 私は真紀。長月真紀です。研究の関係上、ほとんど幽霊部員になるかと思いますが、宜しくお願いします」 「そして」 ここに来て今まで無言を通していた、真紀の隣にいる執事風の黒肌美形男性が答える。見た目よりハスキーボイスだ。 「ワタクシは真紀様の執事兼ボディーガードをしています中尾邦彦と申します。 麻生夏香様、少林寺宅様、こうして言葉を交わすのは初めてですが、今後とも良き隣人、良きサークル仲間として、お付き合いのほどをお願いします」 言いながら中尾邦彦は、優雅に一礼した。 「中尾邦彦……て、それじゃあ、アンタ、日本人だったの!?」 夏香が素っ頓狂な声を上げる。 そいういえば、この男性とは、顔をあわせることは多々あっても、会話することはほどんと無かったことに気づく。 「ワタクシめの血の中には、日本人の血は一滴も流れておりません。 しかしながら、日本の名前を持ち、日本国籍をもつことを日本人とするならば、ワタクシは日本人でございましょう」 あくまで優雅に中尾が答える。 「早速だが、今日の議題だ」 少林寺が口を開いた。 「夏休みがあけると、陰陽寺高校ではすぐに文化祭となる。 各種サークルは各教室で研究結果を発表するのは通年の通り。 我が部としても、今年こそは一般人に分かる研究結果を用意し、部費を獲得したいところだ。 そこで、今年の研究内容について話そう。 最近、急に噂になりだしたことだが 陰陽寺高校やその周辺の街で透明な巨人を見つけた、という噂が立っている」 中尾がピクリと動いたが、少林寺はそのことに気にしたふうはなく言葉を続ける。 「前々からでなく、ここ最近たち始めた噂ということは、何か知らの原因があるはずだと推測する。 そこで、今年の研究内容は……」 夏香が無言で、少林寺を見つめている。 「この透明な巨人に関する情報を集めること。これだ」 心なしか真紀が苦笑したように見える。 「夏休み中盤を過ぎた頃、もう一度、超常現象研究会で会合を開く。 そのときに、まったく手がかりが得られてないようだったら、研究内容を変える予定だ。 質問は何かあるか?」 少林寺の問に、真紀が挙手する。 「もし、それが超常現象などではなく、子供もイタズラだったり、他の要因であった場合は?」 「その時は、研究テーマを変えるさ。 もっとも、例え子供のいたずらだったにせよ、それもまた発表内容のストックが出来るから悪いことじゃない」 では……と、少林寺がメガネの位置を直す。 「本日は、これにて解散。 夏休み中の会合は、日を追って連絡する。よき夏休みを」 「夏休みをー!」 元気よく答え、ふぅ、と背伸びをする夏香に、真紀が、近寄った。 耳に唇を寄せ、たった一言、空気を立てるように呟く。 「今夜、本気で参ります」 |
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