Fists of Wings・番外編
真夏のように〜真紀と夏香〜
■5■
―1―解説解説、また解説
| 「随分と……」 突然現れた人型の機械とそれに乗った真紀を見つめながら、夏香は口を開く。 だが二の句が告げられず、思わず苦笑した。 頭を軽く掻き、ふてぶてしい笑顔を浮かべた。 「随分とお茶目な物、用意するじゃん」 言葉こそ軽口だが、内心は冷や汗を書いている。 明らかに現在科学から見て異質な存在がそこにいた。 中尾であれば、改造人間。 真紀の機械であれば、巨大ロボット。 アニメや特撮のような代物が、現実に目の前にいるのである。 刺客が重火器を持ってくることなどを卑怯などと言うつもりはない。 そもそも暦は夏香を殺すために刺客を送るのである。 事実、銃火器を持ち込んだ相手も居た。 戦車を持ち出されても文句は言えない立場であり、戦車が相手でも戦う覚悟はある。 もちろん戦車であろうと、勝つのは自分だと自負しているのだが。 よもや。 アニメに出てくるようなロボットを持ち出された日には、色々な意味で、戸惑うのである。 「大体ロボットで、能率悪くない?」 余裕ありそうに夏香は言う。 真紀はというと、薄く笑みを浮かべた。 「意外にもそうでもなかったりします。 本来、戦車などの陸上近代兵器は如何に砲台を理想的に運搬するか、という発想から生まれました。 言ってしまえば、移動砲台なんですよ」 腕組すると、真紀は嬉しそうに語りだす。 「しかしそれは、海外のような広い平原や砂漠、荒野などの平地で持つ国から生まれた思考です。 だからこそ、でしょう。 こと、市街戦などにおいて戦車はほとんど役に立ちませんし、戦力としても期待できません」 それで、と真紀が言葉をつなげる。 「日本のような狭い環境の国において本当は、戦車は活躍の場などほとんど無いと言って良いです。 戦車が唯一機能的に運営出来る場所が、富士山自衛隊演習所。 ですが、仮に海外から攻め込んだとして、富士山のふもとの演習所なんて重要拠点の通り道でも無ければ、通る必要の無い場所です。 戦車は重要拠点に続く道が、平地だからこそ成しえる兵器です。 ぶっちゃけて言えば、日本では何にも役に立たない兵器なんですよ」 真紀の口は止まらない。 「そこで、狭い場所を限定にした場合、戦車よりも理想的な兵器が多脚戦車、及び巨大ロボットになります」 ちなみに、現在(2004の段階で)人を乗せることを前提にした上で、ロボットを開発しようとした場合、4Mクラスであれば実現可能であると言われている。 巨大になればなるほど、それを支える足は段々と太くなる。 18メートルのロボットだと、片足がすでに胴体より巨大になってしまう。 そのため、理論上、人型として維持できるのが限界でも5メートルくらいである、と言われている。 逆にいえば、5メートル級のロボットであれば、製作可能なのである。 実際、アメリカなどにおいて(作業用ではあるが)、山間部では多脚のパワーシャベルなどがすでに存在している。 「あー……ところで」 夏香が頬を掻きながら、言葉を挟んだ。 「私、ソッチほーめんは疎いんで、解説飛ばしちゃってもいいかな?」 「……む」 思わずへの形に口が変形する真紀だった。 |
| ■5■―2―に進む |
| ■4■―4―に戻る |
| 図書館に戻る |