Fists of Wings・番外編
真夏のように〜真紀と夏香〜
■5■
―8―床の棺桶
| (!!!) 夏香の中の何かが爆発した。 「うだぁ!!」 ダルファーガの足の裏に向かって。 気化薬莢の爆発共々殴りかかった! 黄緑の爆炎が炸裂する。 それは。 殴りつけてきた夏香共々瞬獄の炎に消失させた。 「……や」 ……かのように、見えた。 「やばかったね。こりゃ。流石に」 彼女は教室の端で、片膝、片腕を床についた格好でダルファーガを見据えていた。 服は瞬時に焼けたのだろう、ところどころ消し炭となり場所によっては穴が開いている。 特にジャケットの背中部分はほとんど喪失してた。 あの瞬間、殴る動作を行うことで、ワイヤーからジャケットを引き千切り、その勢いのまま教室の端まで転がり飛んだのである。 忍術の体得している夏香だからこそ可能な攻防であった。 「夏香さん……やはり、貴方は」 ダルファーガの……いや、真紀の瞳は、夏香を見つめていた。 そこには賞賛と好意と……さらなる好奇心に溢れていた。 ダルファーガは浮かせていた脚を下ろす。 「貴方はすばら……」 そして、真紀が喋り終える前に、ダルファーガの左脚は。 床を踏み抜いた。 「ぬ」 ダルファーガが3階に墜落した衝撃と、先ほどのステップの破壊力が加わったためだろう。 踏み抜いて出来た穴はダルファーガの全てを2階に落とすほどは大きくなく、さりとて左下半身を埋めるには十分な広さだった。 重力に足を引き込まれバランスを崩し、倒れそうになるダルファーガ。 咄嗟に倒れることを回避した。 床に『両手』をついて。 「……ムッハ」 唸る真紀。 思わず見守っていた夏香は静かに立った。 身体のホコリをパンパンと叩いて落とす。 首をコキコキと鳴らしてから、左手で右肘を持ち、右手を顎に乗せる。 そして、夏香はキラリとメガネを輝かせた。 「チャーンス」 つかつかと、文字通りに『手も足も出ない』状態のダルファーガに近寄る。 近場にあった、教室の机を拾い上げると。 叩く。 叩く。 叩く。 机が砕けた。 また近くの机を拾う。 叩く。 叩く。 叩く。 ひたすら叩く。 「うらうらうらー! 顎引け、背筋伸ばせ、歯ぁ食いしばれ!」 「何だかよく分からないけれど、すごい自信です!」 よもや。 人類の英知である人型機動兵器が高校の机でタコ殴りに遭う姿など、今後、人類の文明が育ち、繁栄し、自ら滅ぶこととなろうとも……ここでしか見れない気がするのは、気のせいだろうか。 「これはこれであれですな。 何か情けないけれど、かなりまずいですね」 叩く。 叩く。 机が砕ける。 それを見計らって、ダルファーガは辛うじて動く右足を海老ぞり状に浮かせた。 「ステップ!」 気化薬莢が爆発する。 だが、動作が鈍すぎた。 あっさりとそれを避ける夏香。 その僅かな隙を付き、右足を強引に腹の下に移動させる。 間接部が悲鳴をあげる。 「すいません、ダルファーガ。少しの我慢です!」 脚部を垂直に立たせる。 「ステップ!」 3階床を打ち抜き、その衝撃で穴を広げる。 滑り落ちる形で、ダルファーガは2階へと落下した。 即座に追う夏香。 「む!」 「そうそう、有利な状態にはさせないよ!」 空中で回転する夏香。ポニーテールのリボンがクナイへと変化する。 2階床に着地するダルファーガ。 クナイがダルファーガに向かって垂直に飛ぶ!。 右手のバルカン砲を夏香に向ける! クナイは、寸分違わずバルカン砲の発射口に吸い込まれ。 バルカン砲のトリガーが引かれ。 「しまった!」 バルカン砲は暴発した。 |
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