落し物は交番に


「・・・・・なんだこりゃ。」
海底に墜落した輸送機の翼の付け根に、小型の作業ポッドがあった。
最新型のやつだ。
おそらく、輸送機に搭載されていたのであろう。
「・・・・・・・・九月に手土産にもっていくか、
 運がよければ休暇がもらえるかもしれない。」
そう思い、プロトは不用意にポッドへと手を伸ばした。


●第四話 謀りごと


そうっと手を伸ばして、ポッドのマニピュレーターをつかんだ瞬間だった。
ポッドのライトが点灯し、マニピュレーターでプロトを払いのけて、
輸送機の中へと突っ込んでいった。
「なんだあ!?」
とりあえず、プロトは後を追う。
もっと暗い、輸送機の中へとポッドを追う。
そこでは、その小型ポッドが、コンテナをの装甲を引っぺがし
複数の缶詰を腹のハッチに入れる姿があった。
「あ・・・・あああああ!」
ためらわず、プロトはワイヤーランチャーを放った。
しかし、水中では威力はがた落ちする。
もろに喰らったのにもろともせず、ポッドは別の缶詰を腹の中に収める。
「そ、そ、それは駄目なんだよ!」
至近距離まで近寄って、缶詰からポッドを引っぺがし、
輸送機の天井にぶつける。
それでもまだ缶詰に飛びつこうとするこのしぶとさ!
無線誘導であろう。
「だあああっ!畜生!」
カメラアイを殴りつける。
「なめたまねしやがって!こんの!こんの!」
数発殴りつけてようやくひびが入り、そこからポッドに水が入り込む。
水圧でポッドはへしゃげて、とうとうぺっちゃんこになった。
「おし!」
一人、海中ですごんでみる。
・・・・・・・・・・・寂しい。

「脅迫文書、書きあがりました!」
「見せてみい。」
丁度、プロトが海中で丁々発止とやっていたその頃、
海上では、米政府の依頼で闇蜘蛛一味がサルベージ作業をしていた。



米国 西欧諸国 アジア諸賢 ならびにガイア共和国に告ぐ

我らゲリラ軍団『闇蜘蛛』は、このたび強大な武力を得た

なんなのかは分かっていると思う

もしかしたら、それがミサイルや飛行機に乗ってどこかに突っ込むかも知れぬ

場所は、国会か、首都か、軍事施設か、飛行機か、新幹線か、貿易港か、

それすらも我々にはわからない

貴様の足元かもしれない

しかし!

我々も鬼ではない、もし、あなた方が我々の少しの条件を飲んでくれれば、

我々は素直にこの武力を引き渡そう

その1 政治犯を解放すべし

その2 各国首脳は今すぐに辞任するか腹を切れ

その3 戦争ムードを改善すべし

その4 我々のある程度の自由な行動を認めよ

その5 徴兵反対!

「・・・・・ちょっとまて。」

その6 税金減らせ!

「どうしました。」

その7 破廉恥マンガ取り締まれ!

「これかいたんはどこの阿呆や!?」

その8 自販機の料金を全部25円にしろ!

「私ですが。」

その9 日本の首相は髪の毛増やせ!見るに耐えない!

「・・・・おまえか?」
「はい。」

その10 米大統領!言い間違いを減らせ!
    なんだ!?『人間と魚は平和的に共存できる』ってのは!?(実話で言ってました)

以上 きちんと守ること 『闇蜘蛛』



「なんやこの6から後は!お前は自販機代ケチるために毒ガスと原爆盗むんか!?」
思わず、闇蜘蛛は声を荒げた。
「けど、馬鹿になんないんですよお!」
非常にシビアな意見だ。ある意味で。

「それはそうと、親分。」
「なんや!?」
「なんでガイアなんていうちっぽけなのに眼を付けたんですか?
 そりゃあ、ハイジャック事件で名は高まったけども・・・
 別に、あんな小さい国なんか、
「あまいな。」
闇蜘蛛の鋭い眼光が、海を見据えた。
「お前らはあの大統領のことを知らへんのや。
 だから、んな悠長なこと言ってられるんさかい。」
いつになく、闇蜘蛛の面は真剣だった。
・・・・・・・・・・いや、まるで、脅えているかのようでもあった。
「あれは怪物や・・・」
「親分!」
「なんや!?」
「あの、『ベージャー』からの電波が消えました!」

とりあえず、プロトは、缶詰とナガサキをぶっ壊したポッドに入れて、
そのまま、浮かび始めた。
「さて、お仕事終了だ。」
海上に、ゲリラが待っている事も知らず。


 


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