落し物は交番に
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| 五月五日・・・・もとい、一月二十四日氏は、暦内での新人教育係、諜報係、連絡係などを務める男である。 もとより五月にいたものの、彼はあの男のまるでゴロツキの親分のような雰囲気をうけいれられず、五月除名の少し前に、一月に移籍したという経歴を持っている。 その彼の今の仕事とは・・・特別機動兵との連絡。 要は、プロトのお目付け役である。 「・・・・さて、そろそろ通信を入れるとするか。」 プロトが泣き叫びながらスカイダイブしてから十二時間がたった。 定時通信の時間である。 ヘリコプターの中、インカムを耳元にあて、綺麗に髭がそられた口元を動かす。 「ガルベットー。」 「ぐがああああああああ!」 思わず、インカムを耳からどけた。 ●第六話 演じる 「おきろっ!この万年無気力機動員っ!」 「ぐが?」 ゲリラ闇蜘蛛によって船蔵に閉じ込められたのをいいことに、プロトは今の今まで、 寝ていた。 「あんれえええ・・・いつかかあ?どした?」 「阿呆っ!そろそろ議長の我慢も限界だぞ!とっとと引き揚げて来い!」 唐突に通信は切れた。 「・・・嵐のようなヤロウだ・・」 などとのたまいている場合ではない事に、ようやくプロトは分かって来た。 「・・・・そろそろ帰るか・・」 一発、大あくびをしてから、呟いた。 さてさて、ところ変わってここは日本! その首都東京! さらに首相官邸に・・・・ズームイン! 「総理!総理!総理!」 「連呼しなくてもかまわんよ・・・」 日本の首相、K総理大臣は言った。 彼は、丁寧に新聞を読みながら、イスの上で大袈裟に不快感を示す。 「そんな場合ではありません!公安からこのような書類が送られてきたとの連絡がありました!」 「?」 手渡された一枚の電子メールをプリントアウトされた紙に、 K氏は目を通した。 はらはらとした目で見守る書類を届けに来た某氏。 次第に、K氏の頭頂部がプルプルと震えだす。 青筋が立ち、眉間に分厚くしわがよる。 そして、大声を出した。 「わしの髪の毛は関係ないだろうがっ!」 その日から数日、K氏はとてつもなく不機嫌だったらしい。 「はっはっはっはっは!思い切ったことをした!」 米大統領はペンタゴンに直通で送られてきた書類に目を通して大笑いした。 「・・・これで、連中を片付ける要因ができた!」 今期の米国大統領は、じつに食えない男であると、各誌は発表した。 その証拠がコレだ。もっとも、新聞社にこのことはつかめはしないのだが。 じつは、この軍事輸送機の墜落事件、それ自体が仕組まれた物であった。 某国に金を渡し、わざとエンジントラブルを起こして決められていた地点に飛行機を落とす。 それからフェルを使って、アジアを騒がせているゲリラ結社『闇蜘蛛』を 動かす! 闇蜘蛛が最近、兵器不足に苦しんでいると言う事を、この男はよく知っていた。 ナガサキや缶詰を取ってこいとあらば、嬉々としてサルベージにあたるであろう。 そしてサルベージ後、兵器を奪取して各国にテロを予告するか実行するであろう! それを、アメリカが『正義の国』として叩き潰す! こうして、中近東攻撃で失墜していた米軍の信用は回復、 今までガイアに美味しいところ取りをされた分を返してもらっても、 まだお釣りが来る! 「・・・・・・私の支持率も増加、こうしてアメリカは今の地位を、 絶対的な物にする!」 ガイアなどに遅れを取らせはしない。 それに、ナガサキや缶詰を取り返したらそれをアメリカが 『正義の国』として管理する事だって不可能ではない! そうすれば、EUも、NATOも、アジア諸国も、それに、 あのガイアすらも敵ではなくなる! 「・・・私とわが国の為、せいぜいあの馬鹿共に演じてもらおう!」 結局、脅迫状は原文そのままで贈った。 「・・・けけ、これからどないなるか楽しみでたまらんわ。」 思わず、闇蜘蛛の面に笑みがこぼれる。 嬉しげに熱帯魚にえさをやっていた・・・そのとき! 鈍い音がした。 「なんやあっ!?」 |
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