落し物は交番に
7
| ドアが吹っ飛んだ。 ぶんなぐられた、逃げられた。探してる。 とっても短く簡潔な報告であると闇蜘蛛は思った。 「阿呆!」 見張り役を殴りつけた。 「鋼鉄製のドアが吹き飛んだんやなっ! 爆薬やないかっ!身体検査しとらんかったんか!?」 すぐに、船内に放送が流れる。 「虜囚が脱走!捕縛の上、射殺せよっ!」 ●第七話 ゲリラ屋vsトルーパー アメリカさんの空挺隊が、マンハッタン港から旅立ったと言うニュースが流れた。 各国は、いつものような批難をしなかった。 それどころか出兵を推し進めた。自分達も同じ境遇だったから! ただ一つの国を除いて。 チラリと、蜘蛛は部屋の中を見た。 たしかに、あいつがいる。脱走者のくせに無線室に堂々といやがった。 狙いをつけて、ためらわず、パイソンの引き金を引く。 あいつにぶちあたる。 さらに無表情のまま、第二発、三発、四発。 とどめに、背中にしょっていたサブマシンガンを撃ち込んだ。 これで生きているはずがない。 今頃は、ミンチになっているであろう。 死んでなかったら、化け物だ。 パイソンの直撃とサブマシンガンの掃射。普通の人間だったら、 間違いなく、死。 不意打ちだからこれだけぶち込めた。 闇蜘蛛は格闘家ではない、ゲリラ屋なのだ。 強襲、奇襲がゲリラの十八番。これが自分のスタイル。 このスタイルには、なによりも闇蜘蛛自身が確固たる自信を持っていた。 堂々と、引き金から指を離し部屋に入った。 「がっ!」 みぞおちに強烈な衝撃を闇蜘蛛が感じたときは、すでに遅かった。 今度は、顔面に殴打を受けた。 のけぞりかえって思わず倒れこむ。 そこに、さらにげんこつが飛んでくる。 「ご・・・・ごああ・・・・」 当たる距離じゃない、明らかに遠い、何故当たった!? うめき声を上げるも、闇蜘蛛は冷静だった。 すぐさま、相手の様子を見た。 そこでさらに、うめき声を上げることになる。 あいつは、無傷だったのだ。 「ガイア共和国は、本日未明、大西洋沖へのアメリカ軍派遣を、 正式にアメリカ政府に抗議しました。 また、今回の一連の事件について、 なんらかの情報をつかんでいるとのことです。 中継さんが飛んでいます。首都ヘブンズヒルの前田さーん!」 「はい。ガイア共和国のゴライアス・ゴードン大統領は、 今回の米国による大西洋出兵を正式に抗議しました。 また、それとともに、 なんらかの有力な情報をつかんでいると、 公言したと言う未確認情報が入っています。 このことについて、ガイア大統領府からの発表や記者会見は、 されておりませんが、つかんでいる証拠、というのがなんなのか、 気になるところです。スタジオに戻します。」 「今回のガイアの対応についてどうお考えですか?倉沢さん。」 「今回の一連の騒動の発端は、某国輸送機墜落にあるわけです。 私は、ガイアのつかんでいる情報と言うのは、このことと、 米国との関係だと思っています。」 「ほほう。」 「もっとも、本筋はこれからその・・えと・・ ああ、『闇蜘蛛』!それがどう動くかでしょうね。 それと、腑に落ちないのは、ガイアが脅迫を受けているのに、 米国出兵を抗議すると言う所でしょうか。」 「なるほど。では、今日は番組を変更して・・・・ 闇蜘蛛は、その眼であいつをよく見据えた。 そして、腰に手を当てて、金属製の手甲をとりだした。 はめた手甲の指先は、鋭く光っていた。 「こいつには毒が塗っております。 ヤドクガエルってごぞんじでっしゃろ?そいつの毒ですわ。」 やる気のない声で、脱走者・・プロトが返した。 「・・・どおおも、半日ぶり。そこ、どいてください。 落し物をもらって、帰ります。」 「あきまへんなあ、途中下車は、ひきょうでっしゃろ?」 「いきなり銃弾ぶち込む人に言われたくはないですなあ。」 「・・・・・あんさん、ナニモンや?」 思わず、闇蜘蛛の口からこぼれた言葉に、闇蜘蛛自身が驚いていた。 しかしもう一度、こぼれさせた。 「あんさん、ナニモンや!?」 語調が荒くなっていた。 「・・・・・・・万年無気力機動兵員です。」 「んな・・・んな・・・んなめんなあっ!!」 闇蜘蛛は、右手を振りかざした。 |
| 第8話に進む |
| 第6話に進む |
| 図書館に戻る |