落し物は交番に
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| 「ええっと!本番、十秒前ー!そうっ!緊急!緊急!」 「相田さん、紙、かみー!」 「そこっ!なにやってんの!」 「カメラOK!」 「よーしっ!本番開始まで、5!4!3!2!・・・」 「おはようございます。 本日は、番組を変更して、お送りいたしております。 先ほど、ガイア共和国大統領府が、一連の騒動である、 『某国兵器輸送機墜落事故』 『各国首脳陣脅迫事件』 『米国軍大西洋出兵』 『闇蜘蛛』 に、関連づいて、 米国、某国、そして闇蜘蛛ゲリラ結社が、金銭面、政治面でのつながりがある。 という書類を、本日未明、公開しました。 このことについて、ガイア大統領府からはいっさいのコメントがなされていません。 また、このつながりは、全て米国大統領F氏の独断と、 F氏の一部の側近が起こした行動であり、名誉ある米国市民、議員は、 いっさい関係していないという証拠を記した書類も、 同時に公開されました。 このことについて、K総理は・・・」 ●第八話 ただいま戦闘中 「せいやあっ!」 闇蜘蛛の指先から、刃物がニ、三枚ほど飛び出て、壁をひっかき、 小気味のいい音を立てた。 難なくプロトはそれをかわし、無線室を飛び出した。 とりあえず、甲板に上がる階段へと走った。 「逃がすかい!」 近場にあったスイッチを、闇蜘蛛は勢いよく踏んづけて、叫んだ。 「防火扉閉鎖!続いて、船員は第五防火扉前に銃を持って集合せよっ!」 すぐさま、廊下から出られる二つの階段に、重厚な扉が閉まる。 無論、さっきプロトが出てきた無線室のドアにも同じ扉。 「・・・一対一や!」 「・・・・・・・・・やる気がでないなあ。」 「んならばあ・・・・死ねいやっ!!」 不意に、体制を低くした蜘蛛は、プロトの懐に飛び込み、 両手をあわせて、チョップを入れる。 後ろに飛んでそれをかわしたプロトに、さらに追撃をかける。 しかし、プロトも馬鹿ではない。 「そら。」 エネルギーバルカンで応戦する。 「うひょっ!」 危うくも、ぴょんぴょんと飛び跳ねてかわす闇蜘蛛。 続いてプロトは、右腕でパンチを入れた。 そのパンチは、勢いよく、ワイヤーで伸びた。 「そうかっ!さっきのもそれやなっ!」 狭い船内の廊下を縦横無尽に跳ね回りつつ、闇蜘蛛は叫んだ。 「だが・・・たねがわかりゃあ・・」 腕が取れてきゅうりの輪切りのようになったひじのあたりから伸びる、 ワイヤーをつかんでふりまわし、壁にプロトを叩きつける。 「ぐべっ。がべっ!」 得意げに、闇蜘蛛。 「怖くあらへんっ!」 「さあ、どーでしょー。」 と、気の抜けた声を発しつつ、プロトは左腕を飛ばした。 「がははっ!まだふんまわされたいんか?」 ひょいとよけて、すかさず闇蜘蛛はワイヤーをつかみにかかる。 ところが、腕が空を切った。 「あん?」 ワイヤーが・・・ない! 「こっちは磁石。飛んだり、戻ったりする。」 すごいスピードで、磁力で飛んだ左腕が戻ってくる。 闇蜘蛛は、左腕とプロトとの一直線上にいた。 それがまずかった。 「ぎゃはっ!」 左腕と、プロトのひじの部分(マグネ発射機)に、右手をはさまれたのだ。 「変わったことをするのがゲリラ戦法でしたなあ?」 闇蜘蛛の右腕は、動かなかった。離れたとしてもしばらくは動きはしないであろう。 しかし、左腕は、まだ動いた。 ぱっと一瞬だけ手を離し、水平に左腕をふって、プロトの装甲スーツに傷をつける。 「ありゃま。」 「だからどないやっちゅーねん!」 今度は、闇蜘蛛が反撃。 プロトがおどろいて磁力が緩んだところで、プロトを引っぺがし、離れる。 その隙に右腕のワイヤーをもう一度持ち、そのまま、壁に叩きつけ、 装甲スーツの隙間に、手甲から飛び出る毒つきの刃物をぶっ刺す。 「しまいにしたるわあっ!!」 出し抜かれていたのは、自分だったのだ。 「・・・ば・ばかなっ。」 米国大統領は、おもわず、CBCのニュースを見て、凍りついた。 「あの・・・怪物めっ!」 つくづく、自分はガイアを甘く見ていたと後悔した。 全て、始めから読まれていたようだ。 ガイアの提示した証拠書類には、インターポールの捜査官の署名まで入っていた。 「主よ・・・・私を守りたまえ・・」 その主に本当に庇護されているのは、この男ではなかった。 ガイア共和国大統領である、あの怪物、だったのである。 |
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