落し物は交番に
10
| 米国のトップが崩れた事により、各国は事実解明の名目で、 『落し物』をあさり出した。 どこも考えている事は皆同じという事であろうか。 ところが、その中でもとくに力をいれている連中がいた。 欧州である。 大西洋に面したところを所有する彼らは、近頃どうも斜陽になっている国力の増強に、どうしても『MW』が欲しかったのだ。 しかも、欧州といえども国家の集合体。 それぞれが好き勝手に動いている。 『落し物』をめぐっての戦いは、佳境を迎えていた。 ●第十話 逆転 さっきまでプロトと闇蜘蛛が死闘を演じていたろうかの防火扉が、 音を立てて閉じていった。 「第四扉閉鎖!」 「第五扉閉鎖確認!」 「第三扉の閉鎖にかかります!」 闇蜘蛛は、今まさに閉じゆく第三扉の前に立ち、中を覗いた。 そこには、あの侵入者がいた。 壁によりかかり、ぴくりとも動かない。 ・・・・・しかし、妙な奴だった。と、闇蜘蛛は考えてみる。 何のために潜入してきたのだろうか? まあ、しか なにかが、防火扉が閉まる寸前、飛んできた。床を滑るように。 何かは自分に力いっぱいラリアットをかました。 そのまま襟元をつかみ船首へと猛進し、海に落ちる寸前でぴたりと止まった。 「・・・んな、・・・んな・・・・」 「どおおおも、その節は。」 「んなんで生きとんねん!!!!」 「RZ38、RZ38.こちら化け鯨。どうぞ。」 「進路オールクリア。現在速力三十。」 「艦影なし!」 「指示を乞う、どうぞ。」 『こちら漁業組合。速度を上げ目標地点に急げ。発見した船舶は、 撃沈せよ。』 「アイアイッサー!」 前にも言ったとおり、プロトはサイボーグである。 そして、プロトを作った暦の技術力は、半端ではないのだ。 つまり、毒を受けてもへっちゃらなのだ。 闇蜘蛛の部下たちは、機関銃をプロト・・・と、闇蜘蛛に向けた。 「アホ!撃つなっ!当たるやないかっ!」 と、喚く闇蜘蛛。 ちょっとだけやる気を出してプロトは立ち上がり、ホバー移動で闇蜘蛛に向かって突進して、ふんづかまえた。 奇襲大成功である。 「さああて、と。落し物を渡してください。そうすりゃ、この人は助かる。 断れば・・・・・」 プロトは、一歩後ろに下がった。 「オレもろとも心中。だあ、選んだ選んだ。」 部下たちはどよめきだす。せっかく落し物を拾っても、ボスがやられちゃ意味がない。 闇蜘蛛も、さすがにあせった。 思いっきり一本とられた。 なんか対策はないかときょろきょろしていると、海面に目が行った。 そして、釘付けになった。 「どおしたん?」 と、プロトも同じ所に眼を向けたが、やはり、硬直した。 潜望鏡が、あったのだ。 |
| 第11話に進む |
| 第9話に進む |
| 図書館に戻る |