落し物は交番に

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猛烈な勢いで海流を破砕し、トラファルガーは緊急浮上する。
この勢いで体当たりすればタンカーでもイチコロだ。
「・・・見ていろ、私はあいつらと同じ穴には住まん・・・・!」
バラスト(浮上、潜航、姿勢制御用の水)のメインタンクをかっぴらき、
さらにとてつもない速度となる。
「血は血で、あの『落し物』をめぐる争いも、この争いで洗ってけりをつけてやる!」


●第十四話  どこになにがおこってそれをどうしたか


海面を突き抜けるとき、潜水艦の角度が悪いと、
水面の気圧の壁にぶつかって船首がへしゃげそこから浸水して、ボカーン!なんてことになる。
も、えらいこっちゃである。
それをやってなおかつ沈めちまおうってんだからこの艦長さんもじつに博打好きな人だ。

「見えました!真上だ!」
「いいぞ、つっこめえっ!」
「距離三百・・・・二百五十・・二百・・百・・六十・・四十・・・二十!当たります!」


小さな紙くずと大鉄塊がぶつかった瞬間、
単なる紙くずであるはずの闇蜘蛛の船から光が瞬いた。
紙くずはその小さな体をはじけ飛ばし、鉄塊の頭を吹き飛ばした。
のけぞった鉄塊はひっくりかえって海面に叩きつけられ、
大穴の開いた船首から海水が入ってくる。
海水は艦内を圧迫し、それとともにみるみるうちに空気圧が増していく。
やがて、船首の部分が気泡のようにめこめきと音を立てて膨らんだ。
そのまま、静かに潜水艦は海底に沈んでいった。

連中とは同じ穴には決して入らずに、トラファルガーは沈んでいった。

トラファルガーは。

「ぶはあっ!」
「げほっ!がほっ!」
艦内の乗組員たちは、とっさに脱出ポッドに乗って全員脱出していた。

「はいはい、うごくんやないでえ。」
ポッドに、救命ボートにぎっしりと乗った闇蜘蛛一味とプロトが銃口を向けた。
「わいらの勝ちやな。」


 


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