ルリルダイアリー
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| 【料理をしよう】 「やっぱり、女の子なんだから料理が出来ないとね」 ルリル・スーラシーはくたねこエプロン(くた〜っ、とした猫が描かれているなごみ系エプロンだ)をつけて 意気込んでいた。レシピと材料を用意していて、気合いとしては上々だ。 どうして料理をしようとしていたかというと、涅槃幹部の中での女性陣というのはルリルを含めて、後二人、 ラルシャとアーリィしか居ないのだが、どちらも料理が得意だからだ。ルリルはそんなに料理をしない。 それではいけないと簡単に出来そうなレシピを探してきて作ることにしたのだ。 材 料(21×21cmの型1台分) 製菓用ビタースイートチョコレート 120g くるみ 殻なしで 60g バター 90g 卵 2個 砂糖 100〜120g 薄力粉 80g ベーキングパウダー 小さじ1/2 ベーキングソーダ(重曹) 小さじ1/4 塩 少々 型用のバター・飾り用のくるみ 各適宜 お菓子を作ってみることにした。 「……んー」 自分で兵器を作るとか、そう言うことに関してならばレシピを見なくても良いのだが料理となると話は別だ。 下準備で薄力粉、ベーキングパウダー、重曹、塩を合わせ、ふるいでふるって置いた。 飾り用のくるみと中に入れる用のくるみをオーブントースターで焼いて、ざくざくと刻んだ。 「剣とかあると便利かも……」 便利じゃない。 ルリルの脳裏にはチェーンソーが浮かんだりしたのだが、それを使えばまな板もざくざくと刻まれてしまう。 オーブンを170〜180度に温めておいたり、レシピ通りに進めておいた。 「教授もディヴァインもプラン通りに進めれば問題はないって言っていたし」 それは料理ではなく違った奴でのことだが、それについて言う人は誰も居ない。 プラスチック製のボールに卵を割って入れる。その時に失敗してしまい、卵の殻を少し入れてしまったが取り除いた。 テレビでやっている人のように片手では割れないので両手を使って割った。 泡立て器で良くすり混ぜると書いてあったので、ボールの底をこするようにして混ぜてみる。そこに砂糖も加えた。 次にチョコレートを刻んだ。包丁の扱い方も読んだのでその通りにしてみるのだが……。 「痛い……」 ざく、と少し指を切ってしまった。左手の人差し指に血が滲んでいる。少し深く切ってしまったかも知れないので とりあえず念のために用意しておいた傷テープを貼っておいた。後で傷に関してはラルシャに見てもらえばいい。 チョコレートを刻み追えると、バターと一緒に別のボールに入れた。 「次に溶かすんだよね……これ、お湯でも注げばいいのかな?」 バターとチョコレートの入ったボールを見ながら、ルリルは言ったが、それは間違っている。 レシピを見てみると、直接お湯を注ぐのではなかった。沸かしておいた指を入れて少し熱いぐらいのお湯を 一回り以上大きなボールに入れて、バターとチョコレートの入ったボールの底を当てて、混ぜながら溶かすのだ。 木べらで丁寧に溶かしていく。 「……人肌ぐらいの温度に冷ます……人肌……」 ここでルリルは考え込んだ。 実はルリルは一般人よりも肌の温度が低い。自分の肌を当てにしたら失敗するような気がしたのだ。 暇そうに屯雲は組織内を歩いていた。 やることもない、任務もない。闘う相手も居ない。他の戦闘員は全員で払っていた。 「むーちゃーん!!」 そう呼ぶのは組織内でもたった一人しかいない。……一人しか作っていないと言うべきかも知れない。 屯雲だからむーちゃん、彼女はそう説明していた。止めさせようとしたものの止めない。 もう諦めた。 余談だが、某バンドのボーカルもしている幹部がからかってむーちゃんと呼んだら返り討ちにしたらしい。 「……なんだ?」 見ると、いつも伸ばしている髪の毛を一本の三つ編みに纏めていて、エプロンをしている少女が屯雲の方へと来た。 何をするかと思ったら、手を伸ばして頬に触れていた。それからしばらく考え込むように 「これぐらいか……ありがと」 納得したように去っていくルリル。しばらくして屯雲は首を傾げた。 「何を……?」 とりあえず人肌ぐらいの温度を測ったのでそれぐらいにしておく。彼女の感覚は以外と鋭かった。 泡立て器で混ぜながら、チョコレートとバターが入ったボールの中身を卵と砂糖が入ったボールにゆっくりと加えた。 振るって置いた粉類を加えた。二回に分けて加えると書いてあり、さっくりと混ぜて粉っぽさを無くせと言うことだった。 「…さっくり?」 さっくり、と言う表現が解らないので考えてみることにした。 ギルティが相手を切り刻んでいく様を最初に想像してみたが、それはざっくりだ。 ざっくりなら色々と浮かんだのだがそれではないと、首を横に振る。 とりあえず、混ぜていくウチにさっくりという表現について、または状態についてが解ってきた。 混ぜ終わると、焼いておいたクルミを中に入れてまんべんなく混ぜた。 「後は焼くだけだね」 型に作ったタネを入れて、飾り用のクルミを散らして、温めたオーブンの中段に入れた。 「上手に出来ると良いな」 楽しみにしながらオーブンの前に座った。 「むーちゃーん」 「……今度はどうした?」 「あのね。これ、作ってみたの」 暇そうに座っていた屯雲を見つけて、味見をさせることにした。適当な大きさに刻んでバスケットの中に入れた 頑張って制作したブラウニーが並んでいた。見た目も美味しそうだ。 「味見しろと言うのか」 「そう言うこと、美味しかったら他の人にも…」 バスケットを前に置いて話していたルリル。ふと、屯雲が立ち上がった。 「……なかなか美味かった」 去っていく屯雲、意味が分からずルリルはバスケットを覗き込んだ。 「あー!!」 数分前まで、バスケットを埋め尽くしていたブラウニーが忽然と姿を消していた。自分が一つ食べただけだったのに。 ルリルは頬をふくらませると、そのまま屯雲の後を追った。 【Fin】 |
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