それが何か


夜。
連日のハードワークに、疲れきっていたおふたりさんは、
経費で借りた海に近いボロアパートの畳部屋にごろ寝していた。
蛍光灯がジジジと音を立て、一瞬暗くなったりしている。
「科捜研はなんて言ってるんッスか?」
「あの肉片か・・まだ資料が帰ってこない。」
「一週間たつのにッスか?」
「おー・・・おれもそろそろプッツンしそうだわ。」
そこで会話が途切れ、しばらく長い沈黙が続いた。
疲れすぎて話す話題も思い浮かばなかったのだ。
「・・・・・・・畑さん。」
「おれは畑守だよ。」
「・・・・・・・・・・腹へらないッスか?」
「餓死寸前。」

「じゃあっ、いってくるッス!」
財布を持って、緋龍はにこにことコンビニへ出かけていった。
「海岸沿いのホットポットのハンバーグ弁当。あとバリバリ君のコーラ味もな。」
「了解ッス♪」
るんるんと憂さ晴らしもかねて勢いよく緋龍は鉄製の階段を駆け下りて行った。

自動ドアがグイーンと開いて、買い物袋に多量の食料を入れた緋龍が出てきた。
お望みの物があったのか、じつにホクホク顔だ。
「九時ッスね・・・」
なんとなく、自分の胸ポケットに眼を向ける。
「・・・雪ぴょん、まだ起きてるッスかねえ・・」

畑守は、緋龍の帰ってくるまでなんとなく海を見つめていた。
真夜中の海だ。
なんとなく、神秘的なものを畑守は感じる。
ふと、下に目を向けると、緋龍がいた。
アスファルトがグチャグチャの歩道を歩きながら、
携帯電話で誰かと会話をしているようだった。
じつに楽しそうな表情だった。例の、恋人さんだろう。
心からの満足顔とでも言うのだろうか。
「羨ましいね・・若者は・・・・・」
そこで、車道に目が行った。
その車道を、一台のトラックが走っていった。荷台にはモーターボート。

ひっかき傷がついていた。

「!!!!」

「ただいまーッス!」
「緋龍!さっき通りかかったトラックのナンバー見たか!?」
緋龍は、にやりと笑って、
「もちのろんッス♪」
「よおしっ!すぐ追いかけ−・・・・」
畑守の目に、緋龍の持つ買い物袋が入った。
「・・・・・・」
「どしたんッスか?」

その前に、腹ごしらえだった。
「お前なんでこんなお菓子が多いんだ。」
「自分は超がつくほど甘党ッス。」


 


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