それが何か
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| 「なあにっ、今年も優勝したんだし、来年もタイガースが優勝よっ!!」 『けっ、東京湾のど真ん中でなにほざいてやがる。原巨人はこっからだ、 来年ほえ面かくなよ!』 「そっちこ―・・・・あん?」 『どうしたあっ?』 「探知機になんか・・・・・・・・・・・・・」 瞬間、第五雲竜丸の無線機に砂嵐が吹き荒れた。 「おい、どーしたあっ!?タイガースファンの福島よお。おおい!」 漁船猛虎丸は、ひっくりかえっていた。 水しぶきを立て、所々から機械や人間が悲鳴を上げ、 ゆっくりと沈んでいった。 『どおしたあっ!おいっ!』 この東京湾に眠る脅威の存在を、まだ人々は知らなかった。 そしてその無知さが、今彼らを絶体絶命の窮地に立たせていた。 まるで三流の刑事ドラマだと緋龍は思う。 藤倉氏にお伺いしたい事がで始まり、アポはお持ちですかでつながる。 持ってないッスが、急用があるッスと続き、 結局の所、 「お帰りください。」 と、腕の骨2、3本おったろかというような屈強なガードマンに取り囲まれた。 「・・・ちょっとこれは乱暴ッス。」 「失礼、ですが会長のご指示でして。」 伸縮式の警邏棒を取り出して、ガードマンたちはニヤニヤと笑う。 「お引き取りください。」 「それはちょっと無理ッス。どうしてもお伺いしたい事があるッス。」 もしかしたら、藤倉はここにいないのかもしれない。 緋龍はそう思えてきた。 もしいるのならば、会えないそれ相応の理由を言うだろう。 まるでこれはいないことを隠しているようだ。 「お引き取りください。」 ここは一旦退こうかなと思ったが、 さらに挑発的にガードマンが指をぽきぽき鳴らし始めたのが、 緋龍の刑事としての感に無茶苦茶触った。 明らかに敵対意識を彼らはこちらに向けている。 やや空気が緊張してきた。 受付嬢が困った表情を見せる。周囲の人間も遠巻きになる。 一触即発・・・・・・ ぴるるるる・・・・ぴるるるるる・・・・・ 不意に、その空気を根底から打ち崩すかのような携帯の音が鳴った。 緋龍のメールだった。 ちらりと画像を見て、思わずにぱ、と笑う。 緋龍は、くるりとガードマンに背を向けて、受付嬢に尋ねた。 「藤倉さんはここにいないッスか?」 完全にびびっていた受付嬢は、つい口を滑らした。 「は・・はいっ!仙台沖のポートシティに!」 「そうッスか!お邪魔したッス!」 いそいそと外に出た緋龍を、周囲は唖然と見送った。 「仙台沖ポートシティ。藤倉と弓次がそこの出身か・・」 畑守は、口の中にてりやきバーガーを放り込み、にぱっと笑った。 あちこちに散乱した資料をかき集めて、呟いた。 「面白くなってきたなー・・・・・」 緋龍は、そこらのベンチに座って携帯に番号を打った。 しばらく待つ。 「もしもし、雪ぴょんッスか?メールありがとうッス。 うん・・・・・うん・・・・・ごめんッス・・・今度・・うん・・」 なんとなく、彼女は照れ気味だったように思えた。久々だからだろうか。 今はただ、この会話だけに緋龍は没頭していたかった。 |
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