それが何か

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その日、東京湾に五つの火柱が上がった。
守る立場にあるもの、守られる立場にあるもの、その均衡が崩れた。
今はただ守るものも守られるものも、それから逃げる事しかできなかった。


それが何か知らなかった・・・


「海保では大騒ぎだ。巡視艇が五隻撃沈。死傷者多数。
 生き残りはほとんどいない、みんな確実に・・・・・・」
そこまで言って畑守は口を閉じた。
「それでどうなったッス?」
緋龍と畑守は、とりあえず借家のアパートに戻ってきていた。
今度こそ二人は道を絶たれた。
「・・・・・保安庁も警察もお手上げさ。
 実質的な捜査はなぜか避けたい警察、
 これ以上の損害は出したくない海保、
 だが、警察は海保にもっと動いてほしいし、海保も警察にやつの捜査を進めてもらいたい。
 だが、お互いそれができない。
 だから、もっと直接的にやることにしたらしい。」
警察がこの件を建前でも調べていれば、二人にも捜査はできる。
だが・・・警察組織全体がこの件から手を引いたとなると・・・・
それももはやできなくなる。
「直接的ッスね・・・自衛隊でもでてくるッスか?
 ゴジラみたいに。」
半ば、冗談交じりで緋龍は言った。

畑守は、無言だった。


『本日未明、東京湾にて大規模テロが発生し、海上保安庁の巡視艇が五隻、撃沈されました。
 死傷者などの詳しい発表はまだされていませんが、
 K総理は必要な措置として・・・・』

『CBCです。
 ここ、トーキョーベイには今、我々報道関係者も侵入する事ができません。
 現在、ベイ周辺の都市に緊急避難勧告がなされています。
 今回、この避難者たちを誘導しているのは警察ではありません。

 ご覧ください!ジャパニーズアーミー!自衛隊です!
 
 装甲車が数台、避難者たちを誘導しています。
 テロリストvsジャップの素人集団!各方面からも様々な反響が・・』

『今回の陸、空、海自衛隊の一部部隊を用いた東京湾周辺の非常警戒線展開に対し、
 野党側は痛烈な批判を寄せています。』
『ガイア怖さに自衛隊を出動させるなど、貴方は一国家の元首たるプライドを持っているのですか!?』


「もういい消せ。」
ブラウン管が音を立てて闇になった。
「ミッシングウェポン、ゴライアス・ガーデン襲撃以来の大事件ッスね・・・」
「冗談を言っている場合かね。」
「うちの部下の言っている事が冗談に聞こえますか本部長。」
畑守は、目の前で偉そうに座る捜査部本部長の顔を見据えた。
「・・・・言いたいことは分かる。だが、今は協力してくれ。」
本部長は力なく呟く。

「なんとしてでもあの怪物をこの世から消し去るのだ!」


 


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