それが何か

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世界最大手多国籍企業。RJHコーポレーション
その支社は各国の国防省の内部にある。
その内の一つ、防衛庁。

「大失態ですなあ。」
にこやかに笑って男は言った。
白い壁、白い机、白いイスと殺風景なこの部屋には、その男と藤倉がいるだけだった。
「警察だけならまだしも、自衛隊まで動かすとは・・・私がどれだけ手を回したとお思いですかな?」
「能書きは今はやめていただきたい。それよりこれだ。」
ジュラルミンのアタッシュケースをどっかと机に置いて、
藤倉はケースの鍵を開いた。
中からは数千発の白銀の銃弾が無造作に詰められていた。
男は、それを一個手に取り、まじまじと見る。
「ただの銃弾に見えますが・・・」
「一個一個に液体窒素とエヴィルの組織を破壊する細胞が詰められている。
 急速に冷凍して、そのまま体を壊死させるという対エヴィル用の弾丸だ。
 四肢に当てれば弛緩代わりにもなる。」
「なるほど。」
男はケースを受け取り、トランクに入れた。
そのままがさごそとなにやら探し出す。
「・・・・?」
「ああ、あった。」
取り出したのは一枚の封筒だった。
それをぺたんと机に置いて、藤倉に差し出した。
「クレジットカードです。いろいろとお疲れでしょうしファーストクラスでもなんでもどうぞ。
 ラバンダにでもいかれたらいかがですかな?」
そしてそのまま帰ってくるなと男の目が、
男の冷ややかな目つきが藤倉に語りかけていた。
トランクをもった男はすっくと立ち上がり、ドアに向けて歩いていった。

「ロット・J・ハワード!!」

藤倉の叫びに一旦振り向き、
「いろいろとお疲れでしょう。ゆっくり海外でご静養なさる事をお勧めしますよ。」
そう言って、ドアを閉めた。
後には、憤怒する藤倉の歯軋りの音だけが残っていた。



『本日、これより自衛隊が東京湾内に潜むテロリストに対して大規模な作戦を展開すると発表しました。
 生物化学兵器を所有するテロリストに、陸、海、空からの同時かつ波状攻撃で、
 テロリストを完全に沈黙させると宣言しています。』

『米国、EU、アジア諸国、ならびにガイア共和国から同情の声が上がっております。』



海保が撮影した巨大生物の写真を見て、緋龍は驚愕した。
まるでどでかいオオサンショウウオのようであった怪物が、
より筋肉質に、人間らしくなっていたからだ。
「・・・これはいったいどーゆーことッス?」
「どーゆーこともなにもないよ。どうもこの巨生物1号には自己進化能力があるらしい。
 それもとんでもなくすごいスピードで変化する。」
本部長はそう言いつつ写真をもう一枚封筒から取り出した。
「こっちは今回目標を攻撃する範囲だ。」
東京湾の全図であった。
お台場、臨海副都心を含めた東京周辺に赤い円が画かれていた。
「ここにヤツを誘い出したい・・・」
「それは簡単ですよ。」
「そうッスね。」
意外な一言に、本部長は目をかっぴらいた。
「ヤツの縄張りを造ってやればいいんです。テリトリーをね。」


 


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