それが何か

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『現在、東京湾埋立地における自衛隊の作戦行動に基づき、
 レインボーブリッジから廃棄物処理場までの直径約十数kmにわたって、
 緊急避難勧告がなされています。
 また、その周辺にも厳重な警戒態勢がしかれ、警察、自衛隊員が警備をしていますが、
 近隣住民の皆様は注意をして下さい。
 とりわけ、埋立地周辺には流れ弾などの飛んでくる恐れがあります、
 決して近づかぬようにしてください。』


『こちらは、レインボーブリッジです。
 ご覧ください、この数多くの自衛隊員たちを!
 完全に都心部から埋立地に行く事はできません。
 先ごろ公開された映画の1シーンのような光景が目の前に広がっています。
 今回の作戦行動では、生物化学兵器の危険性があるため、
 空中取材を含めたマスコミの行動は全てシャットアウトされています。』


『羽田国際空港では、自衛隊の出動に伴い、全ての航空便が休航されています。
 また、フェリーターミナルも同じような状況です。
 はたして、自衛隊が戦うテロリストと言うのは、
 どの程度の戦力を持っているのでしょうか?』


『首相官邸前です。
 今回の自衛隊の作戦行動では、戦後初の大規模な戦闘が行われるようであり、
 国会内では賛否両論が巻き起こっています。』


オーロラビジョンに次々と映し出される現状を、人々は見守っていた。
だが、彼らにとってはこの件は全くの別世界の行動であり、
まったく関係の無い事であった。
ただ一人を除いて・・・・


『在日米軍が、自衛隊の援護のために極秘裏に出撃したと言う未確認情報も入っており・・・・』


男は、その光景を見て、ほくそえんだ。


『米国の一大汚職を暴き、今や世界の安全保障の中心ともいえるガイア共和国を含めた各国から、
 様々なコメントが成されており・・・・』


全ての事実がノイズに聞こえた。


『戦闘行為には、防衛庁長官も参加すると・・・・』


そして歩き出す。
レインボーブリッジへ、埋立地へ、彼の元へ。
古牙は歩き出した。


 


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