Summer in Gaia〜ヤツらの夏〜


ゴライアス・ガーデン内にあるガーディアンズ専用休憩室。
ソファ、テーブルの他に、ガーディアンズのメンバーの私物と思われる
ダーツの的やオーディオ等が置かれている。

中にいるのは2人の人間。

時計を眺めるガーディアンズの一員、ミュー。彼女はかなり苛立っていた。
そして雑誌を呼んでいるグラス兄弟の片割れ、レッドグラス。
目は雑誌にやっているものの、心中はミューの矛先がいつ自分に向くかと恐々としていた。

重い沈黙。しかしそれはまもなくドアの開く音で破られた。

「ハァ、ハァ‥‥‥た、ただいま戻りました!」
息を弾ませながら帰ってきた兄・ブラックグラス。手にはコンビニの袋を下げている。
「遅くなりましてどうもすみま‥‥‥ヒィ!」
ブラックグラスの耳元をダーツの矢がかすめる。壁にビィィンと刺さる。
仏頂面のミュー。
「遅ぇよ。遅すぎるんだよ!おやつ買いに行くのにどれだけ時間かかってんだよ!
 時計見ろよ、もう昼飯時じゃねーか!甘い物なんざ食えるかよ!」
「そ、そんな事言われましても、このヘブンズヒルでアンパン売ってる所
 探すだけでもすごく苦労したんですから‥‥‥」
恐る恐る袋を差し出すブラックグラス。
受け取って中身を取り出すミュー。
「ん‥‥‥なんじゃあこりゃあ!?」
アンパンの包みがブラックグラスの顔に投げつけられた。
「ぶほ!?‥‥‥な、何すんですかぁ!?」
「お前‥‥人の話ちゃんと聞いてたのかァ?」
「え、え?」
「ばかやろーアタシが買ってこいっつったのは『アンパン』じゃなくて
 『アンパンマンパン』だよ!」
「ア、アンパンマンパン〜っ!?」
「パンの表面にチョコソースでやなせたかしのアンパンマンの顔が描かれた
 アンパンだよ!それを買ってこいっつったんだよ!」
「そ、そんなマイナーなパン日本でだってもう売ってませんよ‥‥!」
「チッ、しょうがねぇなぁー、じゃもういいよ」
そしてミューの顔に残酷な笑みが浮かぶ。
「パンはいいから今度は『コアラのマーチ』のヨーグルトきのこ味を買ってこい」
歯軋りするブラックグラス。
「(グッ、このアマぁ‥‥売ってるわけない事を知ってて言ってやがるッ!)」
たまらず弟にすがるブラックグラス。
「‥‥お、弟よぉ〜お前も何か言ってやってくれよぉ!」
兄に背を向け雑誌で顔を隠すレッドグラス。
「許せ兄者‥‥助け舟を出したら‥‥今度は俺がイジメの標的にされるッ‥‥‥!」
「!!!」
現代社会の心の病巣を垣間見て愕然とする兄者。
「く、くそぅ〜ていうか普通に昼飯にしましょうよ〜
 小銭だってもう少なくなってきたってのにぃ‥‥‥」
財布の中を見るブラックグラス。ミューの目がふと、コインに止まった。
「!‥‥おい、そのコイン1枚貸せ。すげえもん見せてやるよ」
「え?」
細身のサーベルを取り出すミュー。
「"ザンテツ"だ。こいつで金属製のコインを真っ二つにしてやる」
「え?斬鉄剣のザンテツですか?」「いや、無理でしょ‥‥‥」
いぶかしげな表情のグラス兄弟。
「へへ、無理かどうか、その目でとくと確かめな」
ミューがコインを一枚取った。


第3話に進む
第1話に進む
図書館に戻る