Summer in Gaia〜ヤツらの夏〜


『吉野家』ガイア・ヘブンズヒル店店長・柴田源十郎さんの弁。
「いえね、自分は脱サラして研修を受けて、店長になったクチでしてね。
 そりゃ会社に最初に海外赴任もOKとはコメントしときましたけど、
 いきなりガイア共和国に行かされるとは思いませんでしたよ。
 でもまぁ結果としては良かったんですけどね。今は現地の若いアルバイトも
 雇って経営もうまくいってますよ」

「ええ、ありゃあ気になる客でしたねぇ。
 背の高い男、年は私と同じか少し下くらいですかねえ、なんかこう、
 重厚な雰囲気っていうんですか、そういうのをかもし出してましたねぇ。
 スーツとサングラスも様になってましたし、ありゃきっと有名な映画俳優か
 何かですよ。いや私は俳優とかは全然詳しくないんですけどね」

「確かに変でしたよ、横にいた子。恰好も変に派手でしたけど、男が
 丼食ってるのを「はー」とか「ほー」とか言ってずっと眺めてるんですもん。
 心ここにあらず、って奴ですかね‥‥。
 まぁ最後にはその子も自分の分ちゃんと食べましたけどね。
 親子‥‥じゃなさそうでしたねぇ。まあ、別に私には関係ありませんけどね」


会計を済ませ、ゴードンとミューは吉野家を出た。
「では帰るか」
「えええ!?」
さっさと帰路に着きだしたゴードンにミューは焦った。

(こ、こんなお子様デート以下の代物で終わるのッ!?
 い、いいえ!終わらせないっ!このままじゃ終われないわよッッ!!
 あああでも一体どうすればいいのよーっ!?)

『PiPiPi‥‥‥』
ミューの携帯が鳴り出した。
「ん、誰‥‥‥?」
電話はグラス兄弟からであった。

*『フッフッフ、ミュー様‥‥』『かなりお困りのご様子で‥‥』

携帯を持ちつつ辺りを見渡すミュー。
道路を挟んだ向かい側でグラス兄弟が手を振っていた。
「なんだおめーら、アタシたちをつけてたのかよ。
 ていうか携帯でまで2人で話しかけてくんなよ」

*『おやおや我らにそんな口をきいて』『はたしてよろしいのですかな?』

「あ?どういうことだ?」

*『このままあっけなく終わろうとしているミュー様のデートを』
『持ち直してさしあげようというのです』

「マ、マジか!?ていうかお前らに頼んで大丈夫なのかよ?」

*『ご安心を。こちらにはデートの達人』『このレッドグラスめが控えております』

「そ、そうか。とりあえずゴードン様はこのままガーデンへ帰っちゃいそうなんだ。
 アタシはどうしたらいいんだ!?」

*『チッチッチ、その前にミュー様』『交換条件がございます』

「こ、交換条件だと‥‥‥?」

*『デートが成功したあかつきには』『飲んで欲しい条件があるのです』

「なんだよ、言ってみな」

*『グラス兄弟を"殴らない、イジメない、パシらせない"』
『このガーディアンズ三原則を厳守していただきたく思います』

「なんだそんな事かよ〜。オーケーわかった了解」

*『あっさりOKする所がかえって不安だ!』
『本当に、本当に約束守ってくださいよっ!?』

「わかってるよちゃんと守るから。
 だいいち今までだってそれほどひどい事してねぇだろ?」

*『よくぞ言ったァーッ!』『言い切られたよ兄者ッッ!』

ミュー&グラス兄弟の新たなる作戦が開始された。


 


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