Summer in Gaia〜ヤツらの夏〜

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グラス兄弟の協力を得たミュー。
ゴードンを足早に追いつつ、携帯片手に相談を始めた。
「まずはゴードン様が帰るのを食い止めなきゃならないわ!
 さぁさぁ早く対策を教えれ!」
グラス兄弟もミューから少し離れてついていった。

*『兄者、ちょっと携帯貸せ。‥‥‥えーこちらレッドグラスです。
  まず一つお聞きしたいのですが、ミュー様は一体どのようなデートを
  ご所望で?』

虚を突かれるミュー。
「え?‥‥‥そ、そうねぇ‥‥‥なんかこう、ロマ〜ンティックで
 そんでもって甘ぁ〜い雰囲気が味わえて、そして最後には‥‥‥
 って何言わせんのよこのお馬鹿ッ☆」
1人照れるミュー。
  
*『い‥‥いや、そう抽象的に言われても困ります。
 具体的に言ってください。たとえば"友達の様な楽しい雰囲気でいたい"とか
 "素朴なのでいい"とか"ガンガンいこうぜ"とか』

「ガンガンって何だよ。アタシのデートはドラクエの戦闘かよ」

*『デートはある意味闘いです。そうですね‥‥‥恋愛映画やマンガとかに
 例えればどんな感じのが好みですか?』

「そうねぇ‥‥‥」
ミューの頬がほんのりと染まる。
「以前某少年誌に載ってた桂正和の『I's』みたいな、
 甘酸っぱ〜い恋に憧れてたりするのよね、アタシぃ‥‥‥」

*『‥‥‥‥‥‥‥‥‥』

「ん、もしもし?」

*『ツー』『ツー』『ツー』

「え?もしもし?おーい!?」
なぜか突然携帯は切れていた。


「ぶはははははははははははは!!!!」「うひゃははははははははは!!!」
路地裏で大爆笑のグラス兄弟。地面とか転げまわったりしていた。
「わはははははあーおかしぃー死にそー!!」「ははははは、は、腹いて〜!」
「ははははは、お、おい弟よ〜、け、携帯切っちゃまずいだろォ?」
「い、いやぁでもさぁ、切らなきゃ笑い声聞こえちゃうじゃん、ぷぷっ、
 あははははははは!!」

やっと少し落ち着いてきた両名。
「あぁー面白れぇ〜、もう涙出まくりだよ☆」
「聞いたか兄者、ミュー様が『I's』だってさ」
「あの鬼コロネじゃせいぜい『アストロ球団』か『北斗の拳』がいいとこだよ」
"PiPiPi‥‥‥"
「お、ミュー様から電話かかってきた。早く出ろ」
「お、おお!‥‥‥はいこちらレッドグラスです」


携帯が通じてホッとするミュー。
「おいお前なにいきなり切ってんだよ!」

*『申し訳ありません。どうやら電波の状態がよくないみたいですねぇ』

「それよりさっきの話の続きだけど、どうよ?」

*『‥‥‥ふむ。いや、我々はミュー様のせつなる思いに痛く感動いたしました』

「そ、そう?」

*『はい。兄者などマジ泣きしておりました(あまりの面白さに)。
  我々は身命を投げうって協力する所存であります。
  アスト‥‥‥いや、I'sを目指してがんばりましょう!』

「お、お前ら‥‥‥ホントはすごくイイ奴らだったんだな!」

*『何を水臭い事を、当然ですよ』『我らとミュー様の仲ではありませんか』

胸に熱い物を感じたミュー。
「お、お前らありがとうよ‥‥‥!
 って早くしないとゴードン様が帰っちゃうよ!なんか対策ないのかよ!?」

*『ふむ、ここは一つ「あたし、のど渇いちゃったぁ☆」作戦で行きましょう』

「の、のど渇いちゃった作戦??」

*『つまり、のどが渇いたふりをして近くの喫茶店に誘うのです。
  店に入ってしまえさえすれば、飲むだけじゃなくて色々会話する事も
できますし、2人の時間が満喫できますよ』

「な、なるほど、よし!それいってみよー!」


ゴードンに追いついたミュー。
「あ、あのうゴードン様‥‥‥」
おずおずと話しかける。
「随分と遅れて来たな、どうした?」
「あ、あの私、のどが渇いてしまいましたのっ。だからそこの喫茶店にでも‥‥‥」
そばにあったジュースの自販機にコインを入れたゴードン。
「何がいい?」
「リアルゴールドお願いします」
ボタンを押すゴードン。ガタンと取り出し口から栄養ドリンクが出る。
封を開け、のみぽすミュー。
「渇きは癒えたか?」
「は、はい、おかげさまで‥‥‥」
「そうか。では帰ろう」
2人は帰路についた。

ゴードンに聞こえないよう少し下がって携帯を取るミュー。
*『何やってんすかぁ!自販機で済ませてどうするんですかぁ!』
「うるせーな!だってゴードン様、信じられない速さで
 コイン入れるんだもんっ‥‥!」
*『ふぅーむ‥‥‥御飯はもうすませたし、映画に誘うのも状況的に
  無理がある‥‥‥近くで何かイベントがやっていれば、そこへ行く作戦も
  あるんですけどねぇ‥‥‥』


レッドグラスは自分の携帯を取り出し、インターネットにつないだ。
「今日、ヘブンズヒルでやってるイベントは‥‥と」
「何かあるか、弟よ?」
しばらく画面を見るレッドグラス。
「おお‥‥‥これはいけるかも!」


 


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