Summer in Gaia〜ヤツらの夏〜

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「もしもしミュー様!?いい情報が入りました!
  今すぐ大統領閣下とビジネスパークへ行って下さい!」

*『な、なんで?』

「あのアダム・ワイルダーがそこで番組の公開収録やってるんですよ!」

絶叫するブラックグラス。
「何ィィッ!?アダムがこのガイアに来てるのかぁ!?
 貴っ様ぁぁぁ何故黙ってたぁぁぁッ!!?」
弟の首を絞める。
「ぐええええ、お、俺だって今知ったんだよっ!
 ど、どおりでここらへんは人通りが少ないはずだ‥‥‥
 ミ、ミュー様、わかりましたか?」

*『‥‥‥‥‥‥あのさ、「アダム・ワイルダー」って何?』

激怒するブラさん。
「何ィィッ!?我がユナイテッド・ステイツが誇るトップスター、
 "ナイスコメディ"アダム・ワイルダーを知らないだとおおお!?
 貴様ぁーそれでも米国男児かぁぁぁっ!!?」
みんな知らないかもしれないがグラス兄弟はアメリカ人だった。

*『アタシゃガイアの女だっつーの。とにかく、そこへゴードン様を
  うまく誘導すればいいのね?』


(ゴードン様がうまく興味を示してくれるといいんだけど‥‥)
ミューは再びゴードンに話しかけた。
「あ、あのゴードン様‥‥‥」
「‥‥‥なんだ?」
「あ、あのぅ、ビジネスパークの方へ行ってみませんか?
 なんでも、アダム・ワイルダーとかいう人のテレビ中継が行われている
 そうなんですけど‥‥‥」
「ほう?アメリカの有名なコメディアンだな。まだ時間もあるな、行ってみるか‥‥‥」
(おお興味を示したッ!)


『ヘロゥ!ナイス・トゥ・ウミンチュウ〜!』
「THE ADAM SHOW」の文字が輝き、ビジネスパークに軽快な音楽が響く。
その男が屋外ステージに登場すると、観衆達は拍手喝采で迎えた。
爽やかな陽光が差す舞台の上で、アダム・ワイルダーは、舞う。
40才を過ぎているとは思えない、スピーディーなステップ。
ニカッと大きく開いた口と、真っ青なスーツが映える。
床に腰を据えて回転するスピニング・ブレイク。
そしておもむろに両手で指差し、
『アダムDAYO!』
ゲッツでシメた。
リズミカル、かつコミカルな彼の動きに会場が笑いに包まれた。


「YEAAAAAAAAA!アダムサイコー!!」
ちゃっかりショーを満喫しているブラックグラス。
「よかったぁ〜スタートに間に合ったよ〜。弟よぉ〜、
 外に出てきて大正解だったなぁ!まさかここに来てアダムを直に見れるなんて
 思わなかったよ!ワーオ!アダムぅ〜!!」

『WOW!』

「うおおおおおお弟よ!アダムが!アダムが答えてくれたぞおおお!!!」
「うるさいよ兄者、携帯聞こえねぇだろっ!」
横で携帯を構えているレッドグラス。
「もしもしミュー様、聞こえますかー?」


同じく観衆の中にゴードンと一緒にいたミュー。
「おい、とりあえずその横のバカを黙らせろ」

*『すみませんっ、後でよーく言って聞かせておきますのでっ』

「そ、それでさ、これでどうすればいいの?ショーを見てればいいのね?」

*『フッフッフ、それだけでよろしいのですかな?』

「え?どういうこと?」

*『状況をよくご覧なさい。これだけの人だかりの中にいるおかげで、
 今ミュー様と大統領閣下は密着状態にあるでしょう?』

「!‥‥た、たしかに」
パークの会場は満員御礼でミューは隣のゴードンとほぼ密着状態だった。

*『ミュー様、ズバリ、"親密なコミュニケーション"をとるチャンスですぞッ』

赤面するミュー。
「え、えー?こ、こんな所で押し倒せっていうのッ!?」

*『そこまでしろとは言ってませんッ!
  た、例えば手を握るとか、腕に抱きつくとか‥‥‥』

「な、なるほど‥‥!アタシやってみるわ!」

*『ここまでくればあとはミュー様次第です、健闘をお祈りしております』
携帯は切れた。


 


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