Summer in Gaia〜ヤツらの夏〜
14
| ヨロヨロと立ち上がるアダム。 「アダム!もうよせ!あんなアヴない奴と戦う事はない!」 「止めないでくれチャック、私にも意地がある‥‥」 「アダム!」 チャールズが襟を掴んで引き寄せた。 「君は『グラップラー』じゃない!『コメディアン』なんだぞ!」 「チャック‥‥」 アダムがその手を振り払った。 「確かに私はコメディアンだ‥‥‥‥でも『男』だッッ!!!」 "おおお‥‥‥"と奮える観衆。 「アダムー!」「アダムー!」「ア・ダ・ム!」「ア・ダ・ム!」 観客達からアダムコールが起こりはじめた。 「チッ、面白くねぇな‥‥」 ミューは側のスタッフに呼びかけた。 「おい、マイク貸せ」 スタッフからマイクをむしり取るとスイッチを入れ、叫んだ。 『うるせーぞこの(Piー!)ども! 今からアタシがこのアメ公を挽き肉のミンチにしてやるからよぉく みてやがれぇぇぇぇ!!!』 なす術なく見守るグラス兄弟。 「俺たちって‥‥」「こんなに無力な存在だったんだね‥‥」 「あとミュー様‥‥」「マジでヒールが板に付いてるよね」 アダムの顔色が変わった。 「『このアメ公』‥‥? Is it the thing of KURIRIN?(クリリンのことか?) Is it the thing of KURIReeeeeーーーN!!?(クリリンのことかーーーーっ!!?)」 「おめぇのことだよ」 再び殺人パンチが火をふいた。 (なんてぇ‥‥威力だ‥‥) その場で崩れ落ちるアダム。そして思った。 「もう、ボケられない」と。 想像以上の破壊力に、アダムの心は折れた。 (恐るべし‥‥ガイア・ガール‥‥!) 体が床に突っ伏し、意識が遠のいていった‥‥。 観客たちもアダムのその様子に"ああ、やはり駄目なのか"と意気消沈した。 (痛くてツラくてしんどいよ‥‥ パトラッシュ、ボクもう眠くなってきたよ‥‥) 「みゅー」 その頬に白く、柔らかい毛が触れた。 (ん、パトラッシュ‥‥?) それはショーが始まる前に会った、白い子猫だった。 「‥‥ノゲイラ?」 見るとステージのすぐそばに飼い主の少女も来ていた。 「き、君は‥‥」 「アダム・ワイルダーさんがんばって!」 少女の純朴な瞳が、アダムの目に映った。 「‥‥‥!」 「どうした兄者?」 ブラックグラスはその場にスックと立った。 「アダムゥゥゥゥ、立ってくれえええ!!」 吼えた。 「おい兄者なに言ってんだ!?」 「君と同じアメリカ人がここで応援してるぞおおお! 『勝て』とまでは言わん!だがッ!だがせめてッ! 米国男児の誇りを見せてくれえええええ!!! アッ・ダッ・ムッ!アッ・ダッ・ムッ!アッ・ダッ・ムッ!」 それをきっかけに観衆のあちこちからからコールが起こる。 『ア・ダ・ム!』『ア・ダ・ム!』『ア・ダ・ム!』『ア・ダ・ム!』 「‥‥‥‥!!」 それらはアダムの耳に、五体に、心に、静かに浸透していった。 (BGM:「ロッキー」のテーマ) 「‥‥な!?」 完全にKO(ころ)したと思っていたアダムの復活に驚愕するミュー。 その死にかけていた体がゆっくりと起き上がり、膝が立ち上がり、 その腕がファイティングポーズをとった。あと腰も振った。(変なポーズです) 「へ‥‥ヘイ!顔は砕けても‥‥‥‥心は砕けないッ! 私にはノゲイラが、そしてこの少女‥‥名前なんだっけ? ‥‥ええーいシウバでいいや。 シウバちゃん(仮名)が、そして世界のみんなが応援してくれている!」 『ア・ダ・ム!』『ア・ダ・ム!』『ア・ダ・ム!』『ア・ダ・ム!』 前よりもさらに勢いを増したアダムコールが沸き起こった。 少女も一際大きくエールを送る。 「アダム・ワイルダーさんがんばってェー!あとわたしシウバじゃないから!」 「て、てめぇ‥‥」 「聞こえるだろう、このアダム・コールが‥‥! 例え四肢が折れようとも、人々が(特に可愛い女の子が)応援してくれる 限り、私は立ち上がる!」 「なぜなら!私は!愛の為に戦っているからだ!! 愛に生きているからだァッッッ!!!」 『おおおおおおぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!』 おおいなるアダム・コールが会場を包み込んだ。 |
| 第15話に進む |
| 第13話に進む |
| 図書館に戻る |