Summer in Gaia〜ヤツらの夏〜
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| 完全復活し、愛の偉大さを説くアダム。 「ほおぉ‥‥愛に生きるか‥‥」 手をパキポキ鳴らすミュー。そして一呼吸おいた後、大きく振りかぶった。 「それじゃあ、愛に死ねやぁぁぁ!!」 ミューの拳がまたしてもアダムの顔にスマッシュヒットした。 「へっ、終わったな」 去ろうとしたミューの肩がしっかとつかまれた。 「!?」 「愛は負けない!!」 振り向いたミューの顔にアダムのパンチがクリーンヒットした。 ミューの脳が揺れ、一瞬よろめく。が、歯を食いしばって耐える。 そしてアダムと同じように肩をつかんだ。 「!」 拳にハァ〜ッと息を吹きかけるミュー。 「愛、愛、愛っててめぇはワーヒーのラスプーチンかァ!?」 鈍い音を立て、ナックルパンチがめり込んだ。 しかしアダムは倒れない。 アダムの根性のおかげもあったが、ミュー自身の力もかなり落ちていた。 (チッ‥‥腹が減って力がはいらねぇぇ‥‥ 牛丼並一杯じゃあ全然足りねぇよぉぉ‥‥) 「ヘイ!やってやるぜッ!」 むなぐらをつかむアダム。 「ああ!?やってみろやぁッ!」 ミューも襟をつかみ返す。 お互い相手をにらんだまま大きく振りかぶる。 「ユー・サノバァ・(Piー!)ッチ!!」 「ヤン(Piー!)ー・ゴーホーム!!」 互いの顔に互いのパンチが炸裂した。血と汗が飛び散る。 しかし2人ともひるまない。 再びふりかぶる両者。 「〜〜〜!」 「〜〜〜!」 再び同時に鉄拳を見舞う。 腕をふりかぶり、殴る。 ふりかぶり、殴る。 殴る! 殴る! ただ、殴る! お互いガードなど考えない。相手を打つ事のみに特化した攻め。 「ドン・フライvs高山善廣」の再来にビジネスパークが沸いた。 「THE ADAM SHOW」が別に格闘技番組ではないことや、殴り合ってるのが コメディアンとゴスロリッ娘である事など小さな問題であった。 しかしやがて、両者にも限界が訪れた。 「ハァ、ハァ‥‥やるじゃねぇかアメ公‥‥!」 「ゼェ、ゼェ‥‥まだまだ元気‥‥イッパイだぜッ‥‥!」 お互い次が最後の一撃になると確信した。 2人とも大きくふりかぶり、 最高の拳が弾け合った。 「‥‥2人とも倒れたぞ!」「両者ダウンだ!」「勝敗はどうなるんだ!?」 レフェリー・シルバー山田がダウンカウントを取りはじめた。 『ダウーンッ!テン・カウントをとる!ワーン!ツー!‥‥』 「いやお前どこからわいて出てきたんだよ!?」 ミューの叫びにお構いなくカウントを進める山田さん。 「スリー!フォー!‥‥」 「アイム‥‥ゲイム!(やってやる!)」 先に立ち上がったのはアダムだった。 『ア・ダ・ム!』『ア・ダ・ム!』『ア・ダ・ム!』『ア・ダ・ム!』 アダム・コールが彼を文字通り奮い立たせた。 「アダムさんがんばってー!」 シウバちゃん(仮名)も応援していた。 アダムが悠然と、ミューを見下ろす。 「このアダム・コールが‥‥人々の愛が私に力を与えてくれる! そう!最後に愛は勝つのだ! 悪行超人である君にはわかるまい!」 「誰が悪行超人だ。 ‥‥そう思ってるんならお門違いだな。愛の為に戦ってるのは、 てめえだけじゃあねぇんだよ‥‥!」 「なんだと!?」 『シックス!セブーン!‥‥』 (そう、たとえ観客全員が敵に回ろうが、あの人さえいてくれれば、 私はがんばれる‥‥!) ミューは観客席の一端へと目を走らせた。 はたしてそこには、腕を組み悠然と構えるゴードンがいた。 (ゴードン様‥‥!) 視線こそサングラスで見えなかったが、その頭が縦にゆっくりと、かしいだ。 一度。そして二度。三度、四度‥‥‥‥‥‥ 寝ておられた。 (ゴードン様ッッッ!!?これはその、アレですか? こんな茶番は見る価値もないと、そういう事なのですかッ? で、でも‥‥そんな薄情なゴードン様も‥‥好きッ‥‥‥‥!) ミューは静かに泣いた。カウント10が数えられる頃には意識も遠のいていた。 「ウィナー、アダムッ・ワイルダァァァァァァ!!!」 |
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