の絆

作者 恵駆

第一章「引かれ合う運命の糸」


 あれから幾月かの時が流れた。

 ここはとあるホテルの一室。
 その部屋ではショートカットの1人の女性が、ノートパソコンに向かっていた。
 ふと、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

 ドアに顔を向けることもなく、女性はそう答えた。
 しかし、いくら待っても誰も入ってくる気配がしない。

「……あら、いけない」

 女性は何かを思い出したかのように立ち上がると、ゆったりとした足取りで、ドアを開ける。
 すると、ドアの向こうにかなり不機嫌な顔をした銀髪で色黒の男が立っていた。

「ごめんなさい、オートロックだったってこと、すっかり忘れてたわ」
「本当かよ……」

 自分をにらむようにしている男に、女性は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
 男はそのまま部屋にずかずかと入ってくると、女性に1枚のMOを手渡した。

「ほらよ、アンタが欲しがってたデータだ……」
「ありがとう、K´」

 K´からMOを受け取った女性……ウィップは、すぐにパソコンにMOを差し込み、中に入っていたデータを確認し始めた。

「いつものことながらすごいわね……あなたが一番信頼してる情報屋さんって」

 検出したデータの膨大な量に感心しながらも、ウィップはキーボードを打つ手を止めることはなかった。

「こっちは会うのも一苦労だけどな……」

 そうぼやきながら、K´は後ろからウィップの様子を眺めていたが、ふと、パソコンの隣に置いてある白い封筒に目をやった。

「アンタの所にも届いてたのか……」
「ええ……」

 振り返ることなくウィップは答える。
 すると、キーボードを打つ手を止め、画面とにらめっこをするように頭を人差し指で小突きながら、K´に尋ね返してきた。

「それで、あなたは出るの?」
「出るって、何にだよ?」
「決まってるじゃない、これによ」

 そう言うと、ウィップは初めてK´の方に振り返り、机に置いてあった封筒を手に取った。
 この封筒の中に何が入っているのか、この2人にはわかっていた。
 『ザ・キング・オブ・ファイターズ』の参加招待状である。
 しかし、K´は興味がないと言った感じで小さくため息をついた。

「……興味ねえよ……」
「そう? 今回の大会はちゃんとした大手のスポンサーが多くついている表大会みたいだし、私は面白いと思うけど?」
「過去にも似たような形で開催されて、結局大騒動になったことがあっただろ? 俺は裏で何かないか調査することになってんだよ」
「そう……ホーリーナイツの隊長さんも大変ね」
「からかってるのか?」

 冗談よ、といった感じでウィップは手のひらを返すと、再びパソコンに向かってデータの検索を再開した。


 

第一章・2に続く
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