KOF
ニュージェネレーション
作者 タイ米
ラウンド1 「番狂わせ」
| KOFの招待状が世界中の格闘家に送られる数ヶ月 前、日本ではある格闘技の大会が行われていた。 全日本異種格闘技大会。 あの草薙京が、当時の優勝候補だった二階堂紅丸、 大門五郎を撃破し、その後の格闘界での活躍の足がか りとなった大会である。 格闘ブームが去った今も、この大会は変わらず続い てはいるが、草薙京以上の逸材は未だに出ていない状 態であった。 優勝候補といわれる実力者が、自分の面目をちゃん と保っているといえばそれまでだが、観客はどこかで 当時のような番狂わせを期待していた。 が、それもここ数年ずっと出ていない。 そして、今回もその繰り返しかと思われていた。 そんな雰囲気を打ち破ったのは一人の少年であった。 戦っているのは優勝候補の一角といわれる空手の実 力者。 少年は彼の前に防戦一方であった。 観客の誰もが、空手家の勝利を信じて疑わなかった。 少年の防御が弾かれる。 空手家は、わずかな隙を見逃さなかった。 「終わりだ…」 渾身の正拳突き。 これに倒れてきた挑戦者は数知れず。 剛拳は新たな獲物に、相手の少年に向かって襲い掛か った。 と、ここで拳の前に紅い『何か』が行く手を阻んだ。 とっさに拳を止める空手家。 「炎!?」 空手家は驚いた。 と、少年はいつの間にか空手家の懐にいた。 「あんた、ダメだよ。これくらいで驚いてちゃ…」 少年の表情には笑みさえ浮かんでいた。 ここで、少年の肘が空手家の腹に入る。 「!?」 無言ながらも、想像以上の重い肘に空手家は驚いてい た。 だが、攻撃はそれでは終わらない。 両手で空手家を持ち上げた後、大きい爆発が二人の周 りで起きる。 余りの衝撃に遠くまで吹き飛ぶ空手家。 辛うじて立つも、かなり体力を奪われたようだ。 「さすがは優勝候補さんだ。今のを喰らってもまだ立て るなんてね…」 少年は早くも次の攻撃の準備を行っていた。 手を交差させ、二つの炎がそれぞれの手に集約される。 その勢いは、今まで見せた炎の比ではなかった。 (い、今までのは本気じゃなかったとでも言うのか!?) 動揺する空手家。 「見せてやるよ。俺の本気(マジ)を…」 炎がさらに燃え盛る。 空手家は覚悟を決めた。 (いいだろう。そっちがその気なら、こちらも本気で全 てをぶつけに行く!!) 呼吸を整え、全ての力を右の拳に集中させた。 「感じるぜ。あんたの力が、本気が、想いが!!」 少年は空手家から感じるその闘気にワクワクした。 同時に、炎の勢いがさらに強くなる。 「勝負だぜ! 空手家さんよぉ〜!!」 「行くぞ! 少年!!」 炎の壁と全てを賭けた正拳突きがぶつかる。 そこには技術も何もない。 ただ、在るものをぶつけるのみ。 二人が炎に包まれる。 炎から出る煙によって、何があったかわからない。 観客はその間、沈黙を保った。 煙が晴れる。 立っていたのは少年であった。 「ハァ…ハァ。やっぱ、シードとの対決は楽じゃないや」 少年の息はかなり荒れていた。 「ま、その分、楽しめたけどな…」 少年は掌に炎を集約させる。 「ウン、まだ行けそうだ!」 そう言い、炎を握り潰す。 そして、倒れている空手家にこう言い添えた。 「どうだい! 燃えたろ!!」 観客に衝撃が走った。 そして、次の瞬間、歓声が会場中から湧く。 これを待っていた。 世紀の番狂わせを…。 そして、草薙京を超えるであろう逸材を…。 『勝者、草薙焔選手!!』 リングアナが高らかに焔という少年の名を告げる。 その瞬間、彼は喜びに打ち震えた。 そして、こう叫んだ。 「俺のォ、勝ちだぁっ!!」 観客の歓声はしばらく鳴り止む事はなかった。 |