血塗られた歴史と炎
ラウンド10「1800年前の過去(後)」
九禄は、山の頂上で、草薙と八尺邁を待っていた。
さる大木に消えない炎をつけながら、水気を払い…
そして、草薙と八尺邁もしばらくして、山の頂上まで
服や身体を雨に当てながら登ってきた。
現れた草薙と八尺邁の顔を見るなり、九禄の口元が緩む。
『遅かったですね…お二人とも』
『…何故俺たちをここに呼んだ…何故人を殺した…
その必要があったのか…』
今までに九禄と話していたときにはなかった、
人を凍えさせるような言葉遣いで八尺邁は九禄に聞いた。
『…答えろ…!』
『落ち着け、八尺邁。怒りながらの物言いは
ただの遠吠えと同じだ』
八尺邁の怒りを抑える草薙。
『…九禄、オロチの力に、手を出そうとしているな?
その力は、持てばいずれ災いをもたらす。今からでも
遅くない。戻るんだ。…戻ってこい』
草薙はそう言って手を差し出すが、九禄の返事は…
『…もう、遅いと思ってください…』
草薙に向かっての、右手からの火球の連続攻撃の
洗礼だった。
その火球の威力がまだまだだったので、
草薙は手に炎を灯し、火の粉で火球を軽く打ち消す。
ただし、反撃ということは、しない。
『…やはり、そうなって、しまうか…』
もう彼は戻れないかもしれない。そうであっても
動くそぶりすら見せず、ただじっとする草薙。
『くそっ!!俺は!俺は!!かなわないのか!?』
火球をただただ打ち続ける九禄。それを消し続ける草薙。
いっぽう、火球が飛んでこない八尺邁はついに動いた。
『九禄!貴様…!』
炎が八尺邁の手からでた。が、それを草薙は止めた。
『八尺邁、やめろ』
『貴様……!!何故止める!』
『九禄に炎を打って動きを止める、というようだが…
そんな生易しいことでは今のこいつは止められぬ』
八尺邁はその言葉に反感を覚えたが、言葉の言い方に
刺が無い、そして信頼のできる『仲間』の
草薙だったので、すぐに怒りを抑えることができた。
『……だが、そうすると、お前は何をする気だ…?』
『……こうするのだ!!』
草薙は火の粉同然の火球を払っていた炎を握り潰す。
『九禄……私の答は、これだ!!』
そして、九禄に大蛇薙の炎で薙ぎ払った。
『ぐわあああああっ!!』
☆
九禄は地面で転がる。転がって炎を消す。
『そんな……何か…間違って…いたんですか…?』
這って近づいて、草薙にすがりつく。
『……それが解ればいい。とりあえず、力だけでは
どうにもならないということだ』
優しく手をさしのべる草薙。
『……甘い奴だ』
八尺邁もそんなことを言いながら、どこかしら
嬉しさという名の笑みはあった。
『……本当に、すいませんでした……!』
九禄は草薙の手をとると、ゆっくりと、新しい気持ちで
起きあがった。
『……草薙、九禄、見ろ』
『……あ』
『気づかないうちに、雨が、止んでいるな』
冷たいものもあがり、満点の星空がやってきたころ、
二人に『弟子』が、戻ってきた…かに見えた。
だが、それは、あくまでも一瞬でしかなかった。
そう、ほんの一瞬でしか……
☆
二人と九禄の間に、オロチ本人が、思念だけではあるが
現れたのだ。
思念体だけに以上に大きいうえ、
この事態は、草薙も八尺邁も予想だにしなかった。
『……何故、お前がここにいる。…まあ、思念だけでも
出てこれる理由は…』
草薙が言おうとしたことを、オロチが続けた。
『今日が私を封印した日…だからか…何年も前だがな』
八尺邁は戦闘体制になり、九禄は身も凍るなにかの
恐怖に立ちつくす。
『こ…これが……立っているだけで…』
九禄がオロチの恐怖に威圧されているとき、
オロチが九禄のほうを向く。
『…八尺邁と炎を灯すとき、草薙のもとへ還るとき…
それは……無にかえるとき』
その時、オロチの手から放たれた光が、
九禄の頭を打ち抜く……
☆
『……俺…結局……最後まで…駄目でした……』
『……九禄?九禄ーーッ!!』
☆
「そうして、その九禄は死んだ……」
桐生の話はそこで終わった。
「!?ちょっと待てよ?その九禄が死んだんなら、
お前はいねぇはずだろ?」
京は、やや解ってないようで、本当に解ってない
発言をした。
「馬鹿が……従兄弟というものを知らぬわけはあるまい」
「てめぇにだきゃ言われたくねーな、馬鹿ってのは」
少しだけ関係が和らいだ感じはあったが、
いつになっても平行線の関係の京と庵。1800年前とは
大ちがいである。
しかし、庵のこの『従兄弟』言葉は納得がいく。
「……従兄弟ってのは、…そうなんだよ。それで、
あの出来事で、九禄一族はオロチのせいで一族の関係が
壊れた。その大本の草薙、八尺邁、
お前らに恨みを持って生きているわけさ!」
桐生が今までのことをきちんとそろえるように喋る。
「それは、逆恨みというものだぞ」
リュウがポツリという。
「……うるせぇ……自分でも少しは分かってる!だが!
これは…血の宿命だ!!」
リュウの言葉で、頭に火の付いた桐生がくる。
「……やれやれ……どいつも一緒だ」
「言ってる場合ではない。」
来るぞ。とリュウが続けようとしたその時、
桐生の背中を何かが切り裂いた。
「!!……てめ……」
ラウンド11に続く
ラウンド9に戻る
図書館に戻る