塗られた歴史と

ラウンド11「ラストラウンド」

「……くそ…っ……!」
背中を大きく縦に斬られた桐生は、そのまま派手に
倒れる結果となった。
「ってめ……どういうつもりだ!?」
傍観することしかできなかった京だが、この行為は
あまりにも信じられなかった。
そう、桐生に傷を負わせたのは、ジークだったからだ。
「…こいつは、十分な『将棋の歩』として
十分に利用できた…。まあ、あの力…『血の炎』だけは、
十分に利用させてもらうがな……」
血糊で染まった右手を握り、グチャグチャと気味の悪い
音を立てながら、ジークは言う。
「血の……炎?」
「奴の持つ炎のことだ」
京がなんのことだか解らないという顔をしていると、
庵が説明に入った。
「血の炎…九禄の一族の一つがオロチに殺されてから
心の中で哀しみ、憎しみが大きくなって生まれた
炎だと聞く。その炎の力は、俺たちの炎よりも
はるかに上だと言う…」
「よく調べたな、八神庵よ」
「……偶然だ、それを知ったのは」
今の言葉、何か真実味のない言葉遣いだ。
「……ところで」
京のほうに目をやるジーク。
「お前がここにいる以上……私はお前という大事な
礎を放っておくわけにはいかぬ。再び我が元にこい…
組織ネスツ再興のために」
そう言うが、京がYESというわけがない。
「ヘッ…また、モルモットにでもなれってか?
それとも『和解して、協力してネスツを作ろう』とでも
いうのか?」
そう言うと、ジークを指さして断言した。
「てめぇの言う『再び』の『ふ』の字を聞く以前の問題
だな!俺が言う返事は『GOOD BYE』!
ネスツは潰れるのが運命だぜ!」
説得力のある言葉。
「草薙、俺もやるぜ。ネスツは、完全につぶさなきゃ
なんねぇ!!」
京の言葉を聞いてか、K’も前に出た。
「俺は京を殺すために貴様が邪魔な存在だ…」
庵も来る。
「二人も加勢してくれるとはな。でも、あんたも、
俺に力を貸すんだろ?」
後ろを向く京。
「リュウ」
「…俺は、強い奴と闘えれば、それでいい」
リュウの自分らしさが出ている。
「四人で来るか…面白い」
ジークは、笑みの入った台詞を言うと、そのまま構えた。
「来い……弱者!」
「そうかどうか分からせてやるよ!!いくぜ!!」
            ☆
「八神裏百式、鬼焔あっ!!」
「草薙百式、鬼焼きいっ!!」
鬼焼きと鬼焔がジークに向かってくる。
だが、この2つを蹴り返してたジーク。
「たわいもない……」
「それはこっちのセリフだあっ!!」
Kが炎を手に纏って突進してきた。
「な!?」
ギリギリのところで気づき、攻撃を受け止めるジーク。
「ぐぬぅぅ……」
「うおらあああっ!!」
K’はそのままジークを跳ね飛ばした。炎に包まれる
ジーク。
「ぐうおおおっ!!」
自らの油断があったと悟るジーク。
「おのれ……お前たち、地獄の底へゆけ!!ハアッ!!」
怒りが頂点まで達したジークは、エネルギーを
手のひらにチャージし、発射した。
眼で見ては明らかに避けられない太さ。
「何っ!?あんな秘策を!?」
「ばかな……!!」
リュウとK’がもうダメだと思ったその時、なぜか
その光はこなかった。
「……?」
つぶっていた目を開く。京だ。
「いちかばちか……炎でビームを消そうとしたら、
すげぇことができて、消せちまったんだよ」
拳の炎が、今までより熱く、大きく燃えている。
「今なら、できそうな気がするぜ!リュウ!力を
貸してくれ!」
「おう!!」
京の言葉に呼応するかのように、リュウが手の掌に力を
ためる。
「はああああぁぁ…」
「こざかしいっ!!」
気を溜めるリュウにジークが向かってくる。
しかし、その動きは封じられた。
「楽には死ねんぞ…」
庵の八酒杯が動きを止めたのだ。
「貴様……」
「言ったはずだ、京は俺だけの獲物、貴様には殺させん。
それまでは俺も死ねぬ」
ジークをあざ笑うかのように廻る葵い炎と、その番人。
「今だ!真空波動拳!!」
空気をも裂く真空波動拳がジークを完璧に捕らえた。
「ぐおわぁぁぁぁ!!」
後ろに大きく吹き飛ぶジーク。再び木にぶつかる。
そこに彼を追ってきた、炎の男。
「な…に」
「終わりにしようぜ……ジークさんよ、俺の、この剣で」
京はジークをスルーアップする。そして、拳に
炎をたぎらせる。
「いくぜ!!『最終決戦奥義・無式』!!!」
復活した草薙の剣が、それを封印していた組織、
ネスツの男に炸裂するーーー!!!

            ☆

「やったか!?」
もはやそこにいるのはジークではない。黒い煤。
だが……
「フ……フフフ……」
「なにっ!?」
まさにゾンビのごとく、ゆっくりと起き上がって
きたのだ。
「このしぶとさは、オロチよりひでぇな……」
「フン…弱者は死ぬのみなのにな」
やや京も庵も、いいかげんにしてほしいという
感じがあったようだ。
「まだ死ねぬ……我が組織……再興……の……ために」
ゆっくりと、ドタドタ気味悪くジークは足音を
出しながら近づいてきた。
だが、それは、止まった。いや……
『その力、我が元によこせ……』
どこからか声が聞こえてきた。そして…
「な!?なんだ?か、体が…!
うわあああぁぁぁ!!!」
ジークは突如、消滅した……

奴は、この謎の声に、止められたのか?
それに、あの声はいったい……

『格闘家か……面白い奴らだ……』



ファナルラウンドに続く
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